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柳田邦男 零戦燃ゆ・飛翔編 [日記(2006)]

 
南太平洋で覇権を争った,零戦(上) と グラマンF4Fワイルドキャット(下)

 航空機事故を扱ったノンフィクションから出発した柳田邦男には、技術開発、システムを論じた企業戦略ものが多い。著者には零戦の開発ドキュメント「零式戦闘機」があり、本書はもっと広汎な、零戦に端を発した日米の戦闘機開発ドキュメントでり、戦争という組織と組織がぶつかる云わばビジネス競争のドキュメントでもある。戦争は当然国家間で行われるが、ひとつひとつの戦局や、勝敗を総括した(例えば戦力の増強方法など)戦略の立て方等は、経営そのものである(本書でも「戦争経営」という語句が登場する)。戦術、戦艦、航空機、情報機器、装備等のシステム(体系)とシステムの戦いであり、指揮官の優劣が勝敗を分けるることもビジネスそのものである。違うのは戦争は明確な敵の姿があるがビジネスには無い。

 興味深かったのは、日米の戦闘機開発コンセプトであり物作りのフィロソフィーである。日本は一対一のドッグファイトを重視して旋回性・操縦性に優れた軽快な零戦を生んだ。一方アメリカは、高高度からの急降下による一撃離脱の戦法を採るため、頑丈な機体に高出力のエンジンを積んだスピードの出る戦闘機を作った。零戦は軽い機体で旋回性に優れてはいるが、急旋回で機体にシワが生じ、防御壁が無く銃撃に弱かったことは有名な話しである。米軍機は頑丈に作られている分機体が重く操縦性に難があり、これが緒戦で零戦が圧倒的優位に立った要因である。零戦は細みで鋭利な日本刀に似ている。零戦の姿が明らかになるにつれ、旋回性能に劣るアメリカは、2機のF4Fで1機の零戦に当たる編隊空戦線を採るようになる。やがて消耗戦による搭乗員と機体の損失により太平洋に覇権を立てた日本海軍航空艦隊は戦線を後退させることとなる。

 本書ではこのコンセプトの違いを、翼面荷重(機体の身軽さを表す指標。主翼の単位面積当たりにかかる機体の重量)で解説されている。


零戦燃ゆ 1 P249より

翼面荷重は零戦107に対してF4Fは154であり50%近い開きがある.用途の異なる局地戦闘機・雷電を別にして,日米の戦闘機開発思想の違いが分かる.
著者は,本書の構想を第2巻あとがきで次のように記す.

「日本の近現代史は,対日米関係における戦争と友好のからいみあいを,重要な軸として展開してきた.そして,日米双方の特質(長所・短所)は,競争関係にある先端工業技術の分野において,端的に現れる.そこで,日米双方の特質をつかむ手がかりとして,日本的戦闘機の極致である三菱の零戦と,アメリカ的設計思想を典型的にあらわしたグラマンF4F,F6FおよびボーイングB29とを対置させ,その対決の経過を追跡する.」

☆☆☆☆★

零戦のコクピット →http://blog.so-net.ne.jp/e-tsurezure/2005-08-11
吉村 昭 零式戦闘機 →http://blog.so-net.ne.jp/e-tsurezure/2005-07-21

コクピットの写真 →http://www001.upp.so-net.ne.jp/Strumgeschutz-3/senseki0.htm

零戦燃ゆ〈1〉

零戦燃ゆ〈1〉

  • 作者: 柳田 邦男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1993/06
  • メディア: 文庫


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叢雲

 日本刀といえば、島根県の日立金属さんを思い出しますが、この安来工場では国産初の戦闘機開発の話とも縁深いことを、人間国宝のたたらの村下、木原様から聞かされました。
by 叢雲 (2007-11-27 21:07) 

柿沼自動車

 金型の日本ブランドを支えている会社ですね。いま日本製プレス金型が中国で引っ張りだこらしいですね。
by 柿沼自動車 (2008-01-26 00:45) 

これですか?

 ここのこだわりはきっと金型の素材にまであるとおもうので以下新製品の紹介書いてみます。
  次世代冷間金型用鋼SLD-MAGC。これがいまちまたの話題をさらっている次世代のSKD11。独創的な合金設計により加工コスト半減で耐久性は2倍以上。そんな材料で仕事したら仕事が1/4になる?ご心配なく。
 そこで、金型の組み付け調整にじっくり時間をかけて職人技を十分発揮いただくと、製品精度が格段に上がり、中国に負けないものづくりができます。

 車もハイブリッドカーが増えている時代なるべく負荷を与えない金型作り、製品製造にも環境対応も重要になります。さらには金型材自体の自己潤滑性で潤滑油消費量も半減できたというデータもあり以下のような受賞歴もございます。

2006年度 日刊工業新聞社 十大新製品賞 日本ブランド賞

2007年度 素形材技術表彰 経済大臣賞

日立金属工具鋼では6Fプレート状態での注文もうけたまわっております。
by これですか? (2008-01-30 02:13) 

ホンダ

 うちもSKD11はたくさん使っているので、今度SLD-MAGICをためしてみようかな~。
by ホンダ (2008-02-08 19:22) 

賢人

 凄い、発明ですね。多くの人を幸せにする命題は、転写技術にかかっているんですよね。
印刷やデジタル技術もその傍流。
 本当は製品を簡単に転写(コピー)する技術に人類は渇望している。ダボス会議であったように環境負荷の高い転写技術である金型技術をどう考えるかも重要だ。
by 賢人 (2008-02-12 01:10) 

林田

 日立さんのS-MAGICっていう鋼材、切れ味抜群だけでなく溶接性が良くて気に入っています。設変に上手く対応が出来るのがいいです。
by 林田 (2008-05-20 18:55) 

松岡

 金型屋の視点「いざなみ景気におもう」
 古事記に修理固成とありますが、「理を修め固め成す」ことで製品や部品を成型する金型業務を行ってる身、親しみを感じる言葉です。
 この言葉の本来の意味は、日本列島をつくりなさいということで、イザナギ、イザナミ両神はセックスをすることでそれを達成しようとするのです。その描写が金型屋にとってパンチとダイの関係を想起させてしまいます。
 それから、金型素材の特殊鋼の名産地、島根県安来市には古事記の描写どうりのイザナミの神陵というものがあります。安来は修理固成の源郷という説もありこの一致にもみえない力が働いているとも感じられます。
by 松岡 (2008-07-06 11:13) 

鶴田

日立金属安来工場といえば、たたらの源流をくむ海綿鉄プラントがあったところですね。今や、特殊鋼のメッカ。SLD-i,航空機材、アモルファス、ファインメットまで、進化している工場。
by 鶴田 (2016-04-11 07:56) 

職人魂

安来工場圏の協力会社も独自の加工技術を日々研鑽していると聞く。
by 職人魂 (2016-04-14 19:07) 

靖国たたら

日立安来OBには、知覧飛行場出身の神風特攻隊のパイロットがいらっしゃた。安来和彊会って、凄いですね。生きたノウハウの塊に見える。

by 靖国たたら (2016-04-24 08:48) 

鉄鋼研究家

島根の安来に和鋼博物館があるが、主に、たたらが展示してあるが、その中で、海綿鉄が展示してあり、足を止めた。天空に浮かぶ海綿鉄プラントに鳥肌が立った。安来鋼の礎と言っていい。衝撃を覚えた。
by 鉄鋼研究家 (2016-06-12 19:15) 

中野

あの方は最近、定年になられたと聞く、彼の経歴を鑑みるとき、鳥肌が立つほど、感動した。素晴らしいです。
by 中野 (2016-07-16 23:08) 

堀金(大阪)

安来海綿鉄の存在を初めて知りました。勉強不足を痛感。あの、安来でそんな、エキサイティングな活動があったとは、衝撃です。
by 堀金(大阪) (2016-09-04 08:08) 

お名前(必須)

MADE IN JAPANの神髄ですね。
by お名前(必須) (2016-09-17 06:00) 

神田

日立金属といえば、安来工場ですね。電車の窓から、巨大な工場が見えます。安来駅からは、山手と呼ばれる工場があり、感激しました。真砂砂鉄の伝統を誇るヤスキハガネですね。
by 神田 (2016-12-03 15:24) 

東京港区

海綿鉄日本最後の方が近頃定年になられたと聞いた。会ってみたい人です。73
by 東京港区 (2016-12-09 21:35) 

知覧、(開聞岳)

海綿鉄の戦士達。忘れマジ。月並みな言葉で躊躇するが、感動を覚えます。
by 知覧、(開聞岳) (2016-12-14 21:33) 

プレス屋

調べてみたら、日立金属安来工場さんですね。まさに。ものづくりの神髄に出会えた想いですよね。
by プレス屋 (2016-12-14 21:39) 

境港

米子の彦名からも望めました。玉子型のドームをした、独特な形をしたプラント。夕日に映える心象風景でしたね。
by 境港 (2016-12-20 19:39) 

キミガタメ

安来には何かがある。ポスターのキャッチフレイズに暗示させられるポテンシャルがありますよね。私もそう思います。
by キミガタメ (2017-01-07 21:04) 

山梨

泥臭く、ざらっときますね。いい感じです。安来って、凄い。
by 山梨 (2017-02-02 21:18) 

豊田

足立美術館から清水寺を回り、安来和鋼博物館に行ってきました。たたらが主に展示されており、屋外にインゴットが展示されていました。あれが、白銑塊ですね。SL,機銃掃射の痕が残る、大砲が、凄みを醸し出していました。
by 豊田 (2017-02-02 21:56) 

ツーリング野郎、姫路

安来和鋼博物館って、図書館がある建物ですよね。私も、拝ませていただきました。
by ツーリング野郎、姫路 (2017-02-10 19:11) 

プレス技術者

あの、優秀なインゴットが今日の安来ハガネの発展の礎になっているのは、否定できないと思いますね。
by プレス技術者 (2017-03-20 10:51) 

神戸鉄工所

今度、映画たたら侍が上映されますね。ゴールデンウイークには安来では、刃物まつりが、毎年開催されているらしい。本当にハガネの街ですよね。
by 神戸鉄工所 (2017-04-30 12:27) 

土木施工

日立金属安来工場は大変な職場と聞きます。5月頃から、建屋内は、熱くなるらしい。若い、屈強な人でも、倒れるほど、きついと聞く。熱中症に、気を付けて下さい。
by 土木施工 (2017-05-14 19:45) 

トラック野郎

日立金属安来工場。新営が続々できてますね。安来の街からでも解かります。凄いポテンシャルというか、底力を感じますよね。
by トラック野郎 (2017-06-06 20:13) 

テクノアートサンクチュアリ

冶金研究所には、全国から優秀な頭脳がたくさん、集まっているらしい。ドクタークラスもたくさんいるらしい。凄いですよね。テクノの聖地。
by テクノアートサンクチュアリ (2017-06-06 21:29) 

業界

日立金属安来工場は手堅い業績らしい。さすがだな。
by 業界 (2017-06-06 21:38) 

技術者達

日立金属安来工場にも東大、京大、大阪大、九州大、東北大、の院卒の技術員がたくさんいると聞いた。
by 技術者達 (2017-06-07 06:46) 

コーポレ―トガバナンス研究所

企業は誰のためにあり、どう方向づけられるべきものなのか。解かってますか。高次元をも貫く衝撃的な考えだ。

by コーポレ―トガバナンス研究所 (2017-06-07 19:11) 

紺碧の大空、群青。

戦争中は、アーク炉にいた人は、兵隊の招集免除だったらしい。中海からグラマン戦闘機が侵入してきて、機銃掃射もあったらしい、爆弾も数個落とされ、片づけに呼び出しがあったらしい。戦火を潜り抜けてきた、日立金属安来工場ですね。
by 紺碧の大空、群青。 (2017-06-24 20:40) 

靖国神社

日立金属安来工場OBには、知覧飛行場出身の神風特攻隊員のパイロットがいらっしゃった。身体剛健、頭能明晰、アーク炉の大先輩。凄い伝統です。
by 靖国神社 (2017-07-02 18:27) 

大阪城東区

島根の日立金属安来工場。魅力ありますね。行ってみたいですね。
by 大阪城東区 (2017-07-06 16:23) 

東京在住

島根の日立安来海岸工場と言えば、伯太川河口付近のスウェーデン製の巨大な海綿鉄プラントがそびえていました。あれこそが、今の安来工場の発展の礎になっているのは間違いない。なつかしさを
覚えます。
by 東京在住 (2017-07-12 20:43) 

奈良

本当に、エキサイティングな気持ちにさせる、エリア安来ですね。にほんの、貴重な財産だ。
by 奈良 (2017-08-01 09:02) 

茨木

日立金属安来工場を定年まで勤め上げる事。それだけで、ステータスな人物だと思いますね。それから、考えると、安来和彊会の凄さは凄いと思っています。野球で言えば、名球会以上だ。日本の貴重な存在に他ならない。
by 茨木 (2017-08-05 09:18) 

アドバンテージ

製鋼技術、鉄処理技術、加工技術、サポート力、人間力、イコール凄い製品。
by アドバンテージ (2017-08-07 10:43) 

松山

安来和彊会って凄いと思っています。オーラがありますよね。
by 松山 (2017-10-09 09:35) 

武

製鋼の精錬技術、鋳造技術,正に体を張った毎日だと思います。加工技術も特筆ですね。
by 武 (2017-10-10 10:12) 

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