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浅田次郎 天子蒙塵 第四巻 [日記(2018)]

天子蒙塵 第四巻 共和国執政となった溥儀がいよいよ皇帝となり「満州帝国」が成立する最終巻です。第四巻でも主人公は溥儀と張学良。ふたりに加え、駆け落ちして満州に逃れた池上美子と美子を助ける憲兵隊酒井大尉、店の金を盗んで新天地満州に渡った木築正太、府立一中を抜け出した田宮修が引き続き登場。日本の満州政策を解説する永田鉄山、石原莞爾、張作霖の軍事顧問だった吉永大佐(架空人物)、武藤信義の元通訳で奉天特務機関・志津邦陽(架空人物)が登場します。

 酒井大尉は美子を連れて満州鉄道、シベリア鉄道を乗り継ぎパリへ向かいます。彼女の夫は軍を動かし、駆け落ちの相手に召集令状を出し兵役忌避で逮捕させるという手段に出ます。酒井はこの軍と政商の癒着に愛想をつかし、憲兵隊を捨て美子と共に脱走を図るわけです。同じ理由で永田鉄山がふたりに救助の手を差し伸べるというありそうも無い話。どう決着をつけるんだろうと期待したのですが、逃避行はワルシャワの駅で終わる尻切れトンボ。
 木築正太はあこがれの馬賊馬占山の元に向かい、田宮修は満映のオーデションに合格しこれも映画スターを目指しますが、ふたりとも志半ばで決着はついていません。馬占山は抗日ゲリラですから正太は故国を捨てることとなり、田宮の方はオーデションに甘粕正彦まで登場させたのですが、この国策映画会社「満映」については触れずじまい。
 広げるだけ広げて落とし所の無いエピソードは、ストーリーテラー浅田次郎らしくもないです。『天子蒙塵』の主役は「満州」であり愛新覚羅溥儀と張学良ですから、日本庶民の閉塞感のはけ口としての満州はこの程度かもしれません。
 もうひとつ。紅軍(共産軍)討伐の指揮官となるため南京に向かう張学良の元に、周恩来が現れます。宋教仁を語るだけでこれと言った進展はありません。このタイミングで周恩来を登場させたのは、明らかに西安事件と第二次国共合作の布石に他なりません。ということは、第五巻があるということなんでしょうね、浅田さん。

 出色だったのは、溥儀が皇帝となる儀式・郊祭式についての会議。国務院総理/鄭孝胥、民政部総長/臧式毅、財政部総長/熙洽、軍政部総長/張景恵と満州国の大臣が顔を揃えます。郊祭式では、皇帝が「璽」と「玉」を自らを天帝に奉る儀式が執り行われます。この皇帝に璽と玉を手渡す晴れがましい役目を、四人は何だかんだ言って逃げます。満州帝国が瓦解すれば、郊祭式を仕切った大臣は責任を問われることとなり、それを恐れた四人は逃げたわけです。身内の大臣さえも満州帝国を信用せず、満州帝国とはそれほど危うい存在だったわけです。

 挙人の学位しか持たぬ、逃げ遅れた老臣。王朝とは無縁の軍閥から居流れた、氏素性のよくわからぬ男。  三百年前に枝分かれした、遠い遠い親類。そして馬賊の親分と、一羽か一匹かの数え方もわからぬ蝙蝠。 この御方のまわりには、そんなロクデナシしかいない。

見てきたような話ですが、このエピソードは説得力があります。で誰が璽と玉を溥儀に手渡したのか?。「戊戌の変法」で失脚し廃帝溥儀を支え続けた梁文秀と、元大総管太監督(宦官)の李春雲だったとは、出来すぎた話です。
 皇后婉容が娘を出産します。(本書では)不能だった溥儀の子である筈はなく不義の子です。その子は生まれてから一時間足らずのうちにボイラーに放り込んで殺害されます(wikipediaにも記載)。殺害したのは梁文秀の妻で李春雲の妹・玲玲で、浅田次郎は虚虚実実の物語を『蒼穹の昴』で幕を引きます。

 『蒼穹の昴』で始まった物語は『天子蒙塵』第四巻、1934年満州帝国の成立で終わります。積み残し満載で、これで完結と言われても...。

タグ:読書
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TVドラマ ゲーム・オブ・スローンズ [日記(2018)]

ゲーム・オブ・スローンズ 第七章:氷と炎の歌 ブルーレイ コンプリート・ボックス (5枚組) [Blu-ray]  原題、Game of Thrones。amazonPrimeのTVドラマです。米TV映画の質の高さは『ウォーキングデッド』で体験済み。有名な『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ましたが、これが面白い。Thronesは王座という意味ですから、王座争奪のドラマです。

 ウェスタロスという架空の大陸を治める王国の「鉄の玉座」を巡って、七つの諸侯(王国)が反目し同盟し裏切り戦う物語です。ウェスタロスの北には高さ300m?の氷の壁があり、「ナイツウォッチ(夜警)」が異民族「野人」、「ホワイト・ウォーカー」と呼ばれる魔人と死者の軍団の侵攻からこの壁を守っていいます。ウェスタロスは、何年も続く長い冬と夏が繰り返され、物語の時点では、夏が終わりやがて冬が来るという季節に当たります。冬とともに野人やホワイト・ウォーカーの脅威がやって来るという状況です。
 「七王国」というと中世イギリスを、「壁」は「長城」や「ハドリアヌスの壁」を連想します。言わば、ファンタジーで味付けした中世ヨーロッパの覇権争いの物語です。制作費は、シーズン1の10話で5~6千万ドルかけているそうですから、へたな映画顔負けの大スペクタクルです。

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こんなイメージです。なんとドラゴンが登場します。竜は『ホビット』にも登場しましたが、こちらは言わば巨大「火炎放射器」。
 2011年放映が開始され現在シーズン7までが放映済みで、シーズン 8が只今制作中という息の長いシリーズです。剣闘あり大軍団による戦闘あり、愛と憎悪、信義と裏切りの物語、女性の裸も随所に登場し何でもありのエンターテイメントです(笑。

前史
 群像劇の長編ですから登場人物は多彩でけっこう複雑。七つ王国が争う物語ですから、この七王国を押さえておく必要があります。

バラシオン家(家長ロバート)
 ロバートは、スターク家のエダードとともにのターガリエン家の「狂王」を倒し、ウェスタロスの支配者となります。この時、狂王を後ろから刺し殺したのがラニスター家のジェイミーで、以後彼は「王殺し」と呼ばれます。王となったロバートは、ラニスター家のサーセイと政略結婚し、ジョフリー、ミアセラ、トメンの三人の子供がいます。ナント、この三人の父親はロバートではなく双子の弟ジェイミー!。つまり、バラシオン家はラニスターに乗っ取られたことになり、ウェスタロスはバラシオン家とラニスター家の支配となります。

ラニスター家(同タウィン)
 金鉱を所有し七王国の中で一番の富裕を誇り、バラシオン家には妃サーセイと王の護衛長ジェイミーを送り込んでいます。次男ティリオンはインプ、ドワーフ、半人前と呼ばれる身長130cmの朱儒で、ストーリーに重要な位置を占めます。『ゲーム・オブ・スローンズ』には魅力的な人物が数多く籠城しますが、ティリオンの存在感は抜きん出ています。ティリオン無くしては、ドラマの魅力は半減すると言ってもいいでしょう。

スターク家(エダード)
 エダードは狂王を滅ぼした後領地に戻り北の王、北部総督となります。アリン家のキャトリンを妻に迎え、ロブ、サンサ、アリア、ブラン、リコン、そして私生児のジョン・スノウと6人の子供があります。後に、サンサはラニスター家の人質となりアリアは脱出し数奇な運命をたどり、ジョン・スノウはナイツ・ウォッチに加わり、物語の後半を牽引します。

ターガリエン家(デナーリス)
 ロバートに国を滅ぼされ、狂王の息子ヴィセーリスと娘デナーリスは諸国を放浪。ヴィセーリスは、デナーリスを騎馬民族ドスラク人の王に嫁がせ、その軍事力でターガリエン家再興を目論みます。デナーリスは竜の卵を得たことで「ドラゴンの母」となり、ウェスタロス七王国統一に向けて動き出します。

 という前提でシーズン1が始まります。ロバートは狩りで猪の牙で命を落とし、死の床で、正統後継者が成人するまで王位にエダードを指名します。妃サーセイは、エダードを陥れて殺し息子ジョフリーを後継の王位につけます。ジョフリーがロバートの子でないことは公然の秘密で、バラシオン家の次男スタニスが継位の正当性を主張して蜂起し、エダードの長男ロブは、父の仇を討ち、サーセイの人質となった妹サンサ、アリア救出のためバラシオン家に反旗を翻します。

 ここに、鉄の玉座を守るバラシオン(実質ラニスター)、父の仇を討とうとラニスターに戦いを挑むスターク、王位継承権を主張するバラシオン(ロバート弟スタニス)、鉄の玉座のターガリエン(デナーリス)の四つ巴の「ゲーム・オブ・スローンズ」が展開されます。

 この争いに、ターガリエン家のデナーリスとエダードの落とし子ジョン・スノウの物語が加わります。デナーリスは、贈られた竜の卵をし三頭の火を吐くドラゴンを武器に奴隷を解放し、奴隷を軍隊に組織しながらターガリエン家再興のために王都を目指します。ジョン・スノウは、私生児の負い目からスターク家を離れナイツ・ウォッチに身を投じます。
 スターク家の北には、ウェスタロスと北方を隔てるがあります。壁の北には、ウェスタロスを窺う野人と伝説のホワイト・ウォーカーがあり、壁に拠って彼らからウェスタロスを守るのがナイツ・ウォッチです。ナイツ・ウォッチは妻子を持たず現世の欲望を断ち、一生を壁の守りに就きます。ナイツ・ウォッチになると過去の罪は問われないため、犯罪者や追放者の集団でもあります。ジョン・スノウはナイツ・ウォッチの総帥となり、野人を率い一大勢力となって玉座をめぐる争いに一石を投じる役目を負います。

 野人は、壁によって北に閉じ込められた北方の原住民で、冬の訪れとともにやってくるホワイト・ウォーカーから逃れるため南部への侵攻を目指しています。ホワイト・ウォーカーは死人蘇らせて軍団を作る「魔人」で、これも壁を越えて人間世界に侵攻を企てています。何しろドラゴンが登場する話ですから、冥府の魔人がいても不思議はないわけです。

 こうして、七王国+ナイツ・ウォッチ+野人 vs.  ホワイト・ウォーカーという壮大な物語が展開されます。

 ちなみに、『25時』『卵をめぐる祖父の戦争』の小説家デイヴィッド・ベニオフが制作に参加しています。最近新作が発表されないと思ったら、こんな所で活躍していたわけです。

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映画 とらわれて夏(2013米) [日記(2018)]

とらわれて夏 [DVD]  原題は”Labor Day”。9月第1月曜日のレーバー・デーを挟む金曜~火曜、母息子と脱獄囚の5日間を描いたドラマです。

 離婚して息子とふたり暮らしのアデル(ケイト・ウィンスレット)とヘンリー(ガトリン・グリフィス)は、スパーマーケットで脱獄囚フランク(ジョシュ・ブローリン)と出会います。フランクは、盲腸の手術後に刑務所の病院から脱走し、危害を加えない、すぐ出てゆくからと、ヘンリーを人質に匿うことを要求します。

 フランクはアデルを縛り上げ食事を作ってアデルに食べさせます。フランクは匿って貰うお礼にか、石垣の修繕、車のオイルとワイパーの交換、床のワックスがけとまめまめしく働き、ヘンリーに野球とタイヤ交換を教えます。近隣から貰った桃を使って、三人でパイを作ります。アデルとヘンリーは親子でパイを焼く経験は無かったようで、母と息子の味気ない日常に「夫」と「父親」と「家族」の団らんが戻ってきたわけです。ヘンリーは何でも出来るフランクに畏敬の眼差しを向け、アデルはフランクの中に離婚してから封印してきた「男」を見つけます。
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 フランクの過去が何度か挟まれます。フランクは、子供が自分の子供ではないと疑い、それを問いただす中で誤って妻を殺害してしまったようです。愛を失ったアデルとフランクが、男と女の関係となるのは当然の成り行き。これを、ヘンリー視点で舐めるように描きます。この映画の息詰まるような描写は、思春期の13歳の息子の視点です。冒頭、ヘンリーが母親の夫の代役を努めようとする姿が描かれますが、家事を手伝い母親とデートは出来ても夫の代役は務まりません。夫の性愛の代役としてフランクが登場したことは、ヘンリーに微妙な影を投げかけます。SEXに関する会話があり、近親相姦という単語が出てきます。ヘンリーの粘っこい視線とは、離婚によって生じた父性への欠落感とそこから生じる母親への近親相姦願望かもしれません。脱獄囚と女の安っぽいメロドラマに終わるところが、ヘンリーの視点を導入したことで映画に厚みが出たと言わねばなりません。
 シングルマザーの家庭に闖入した脱獄囚の行く末は決まっています。

 ラブストーリーとして秀逸です。

監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ケイト・ウィンスレット ジョシュ・ブローリン ガトリン・グリフィス

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ロバート・ハリス 暗号機 エニグマへの挑戦(1997 新潮文庫) [日記(2018)]

暗号機エニグマへの挑戦 (新潮文庫)   エニグマは第二次世界大戦で使われたナチス・ドイツの暗号機です。アルファベット26文字を割り当てたカムを持つ3枚のローターとプラグを持つタイプライター状の暗号機で、ローターとプラグの組み合わせは天文学的数字となり(150x100万の3乗)、設定が同じエニグマでしか暗号は解読できません。人海戦術で時間をかけて解読できたにしても、その情報は既に過去のものとなり軍事作戦には使えません。
 連合軍は”Bombe”という後にコンピュータに発展する大掛かりな機械を作り、エニグマの解読に成功します。解読されたことを知ったドイツ軍は、エニグマのローターを4枚に増やした改良型で対抗し、連合軍の解読を阻みます。暗号解読が厄介なのは、解読が知られると相手は新たな方式を採用しイタチゴッコとなるため、解読した情報を十分に使えないことです。日本軍の真珠湾奇襲の暗号は解読されていたと言われていますが、奇襲に対応すれば解読の事実がバレます。アメリカ側は、奇襲させておいて次の諜報戦に備えるという目論みがあったのかも知れません。Bombeの開発、すなわちエニグマ解読の事実はイギリスのトップシークレットであり、その事実が公表されるのは1970年代になってからです。この時、開発に携わったアラン・チューリングの功績は初めて評価されます。
 
 『エニグマへの挑戦』は、大西洋でUボートにより貨物船が次々と撃沈される第二次世界大戦中期、「サメ」解読に取り組む英ブレッチリー・パークの暗号学校を舞台にしたミステリです。1943年、NYから戦略物資、食料を積んだ100隻の護送船団が出港します。これを待ち構えるのが「サメ」を積んだ一群のUボート。Uボートの発信する暗号と護送船団の発信する気象情報、航路から、サメ解読の手掛かりを得ようという作戦が展開されます。
 この緊迫した物語に、レッチリー・パークの暗号解析係ジェリコの物語がカブリます。ジェリコはサメ解読の心労に失恋が加わって精神を病み、古巣ケンブリッジで治療を受けていたところを呼び戻されます。ジェリコはブレッチリー・パークの職員で元恋人クレア探しますが、クレアは突然行方不明となります。自室にはエニグマの暗号文が残され、ジェリコはこの暗号文とクレア失踪の謎を追うことになります。ミステリ小説ですから、「サメ」解読よりも失踪した元恋人の謎を追う方が面白く、こちらが主旋律です。
 ジェリコと共にクレアを追うのが、クレアと同じ家に住む電文管理課の女性職員ヘスター。ブレッチリー・パークという戦時下の田舎町で、暗号解読のためにリクルートされた若い男女が出会い恋をし謎を解く物語です。クレア失踪の捜査のためジェリコに近づくにのが外務省のウィグラム。ウィグラムはブレッチリーの警察を指揮していますから、そうとは書かれていませんがMI6でしょう。彼の登場で『エニグマ』はスパイ小説の色を帯びてきます。
 クレアは何故消えたのか、クレアが残した暗号文には何が書かれているのか、MI6は何故クレアを追うのか?。護送船団とUボートが接近し、暗号電波が飛び交い、「サメ」解読の緊迫感のなかで、クレアの残した暗号文(3枚ローターのエニグマで作成されているため解読可能)から驚くべき事実が明かになります。クレア失踪とクレアの背後に隠れる謎の人物が炙り出されます。
 グレアム・グリーン、ジョン・ル・カレ、フレデリック・フォーサイス等のイギリス・ミステリ小説の伝統を受け継ぐ佳作です。『エニグマ』として映画化されていますが、映画より原作の方が断然面白いです。600ページの長編ですが、久々にミステリを堪能しました。
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エニグマ               暗号解読機 bombe(映画エニグマより)

タグ:読書
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絵日記 [日記(2018)]

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 カンナとムクゲです。いずれも6月頃カンナは小さな株を植え、ムクゲは挿し木。カンナは9月には大きく成長して花をつけ、ムクゲは根付いて小さいながらこれも開花しました。
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左はセスジスズメ右はヒトリの仲間で、いずれも蛾の幼虫。スジスズメは成虫になると地味ですが、幼虫はけっこう派手。ヒトリの方は、長い毛を動かせて這う姿はそれなりに可愛いです(笑。

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映画 狩人の夜(1955米) [日記(2018)]

狩人の夜 [Blu-ray]  ファンタジーでかつ(フィルム)ノワールという不思議な映画です。
 1万ドルを奪った男が、金の隠し場所を自白せず死刑となります。刑務所で男と同房であったパウエル(ロバート・ミッチャム)はこの話を知り、金を得るため偽牧師に扮して遺族に近づきます。映画の魅力のひとつが『眼下の敵(1957)』『ライアンの娘(1970)』の名優ロバート・ミッチャムです。両手の指にLOVEとHATEの入れ墨をし、これを使った「説教」で人心を収攬する偽牧師パウェルです。賛美歌を歌いながら登場するパウェルはモノクロ映像と相まって不気味です。

 パウェルは、1万ドルの在りかを聞き出すために男の妻(シェリー・ウィンターズ)と結婚します。パウェルは牧師を騙って未亡人に近づき、財産を巻き上げては殺すという凶悪犯。妻が金の行方を知らないとなったらこれを殺害し、幼い兄妹に魔手を伸ばします。冒頭で明かされていますが、1万ドルはパールの人形に隠され、父親からは決して明かしてはならないと誓わされています。後半は、パウェルを信用せずその魔の手から逃れるジョンとパールの兄妹の逃亡劇。
 ボートで川を下る兄妹の逃亡は、影絵芝居のような美しい映像で描かれます。

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 ボートが流れ着いた先で、兄妹は孤児を育てる老婦人(リリアン・ギッシュ)に出会い引き取られます。実の子に見放された老婦人と、親を無くした子が身を寄せ合って暮らすという設定です。ところがと言うか当然パウェルが現れ、兄妹の引き渡しを要求します。老婦人は、パウェルを怪しみ銃で追い払い、納屋に閉じ込め、あっけなく捕まって死刑となります。
 脅威の去ったクリスマス、老婦人と孤児たちの間でささやかなプレゼントの交換が行われて幕。

 話としてはこれだけです。聖書や讃美歌が随所に顔を出し、教訓的かというとそうでもなく、偽牧師の怪しい説教、パウェルに騙され兄妹の母親と結婚させた近所のオバサン、牧師の影響で狂信的な信者となる母親、捕まったパウェルを「吊るせ!」と荒れ狂う民衆などを登場させ、聖と俗を見据えるのが幼い兄妹の視点です。

 ロバート・ミッチャムの怪演、幻想的な影絵の世界は一見の価値ありです。監督は、『情婦』で弁護士を演じたチャールズ・ロートン。惜しいことに監督はこれ一作のみです。シェリー・ウィンターズは、『ポセイドン・アドヴェンチャー』でジーン・ハックマンを水中から助け出しその直後心臓発作で死ぬ元水泳選手のオバサンです。リリアン・ギッシュは、無声映画の名女優だそうです。
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監督:チャールズ・ロートン
出演:ロバート・ミッチャム シェリー・ウィンタース リリアン・ギッシュ

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映画 シェーン(1953米) シェーンは死んだのか? [日記(2018)]

シェーン HDリマスター [DVD]  『交渉人』で、ダニーとセイビアン(ケビン・スペイシー)が『シェーン』で主人公シェーンがラストで死んでいる云々という映画談義をしています。映画のラストで、馬で去って行くゆくシェーンにジョーイ少年が「シェーン カムバック」と呼び掛けます。この時シェーンは銃弾を受けて既に死んでいる、という説です。ホンマか?→と、あらためて見てみました。

 開拓民スターレットから一宿一飯の恩義を受けた流れ者シェーンが、牧場主ライカーの暴虐に苦しむスターレットを助け、去って行くという「任侠映画」です。この開拓者ス、流れ者、牧場主の関係を軸に、開拓者の妻マリアンと流れ者の淡い慕情、流れ者に憧れる子供、牧場主の雇ったガンマンを配し、ストーリーに膨らみを持たせています。
 西部劇のかたちを取っていますが、舞台を日本に移せば、東映得意の高倉健主演の任侠映画となります。

 牧場主は放牧地を広げるため、開拓民たちの畑を荒し、家を焼き、殺すという暴虐の限りをつくします。任侠映画では、我慢の限界に達した健さんが「殴り込み」よってこの状況を一挙に解決します。『シェーン』では、談合に行くスターレットの代わりにシェーンが行き、銃で一挙の解決。任侠映画では、健さんが殴り込みに行く「道行き」シーン(このシーンで池部良が従い「唐獅子牡丹」がバックに流れる)がありますが、『シェーン』でもこれがあります。池部良の代わりにジョーイ少年がシェーンを追いかけます。殴り込みの後健さんは縛につきますが、殺人を犯したわけですからスターレットの元に帰るわけにもいかず、再びさすらいの旅の出、そこで「シェーン カムバック」となります。
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問題のシーン1             シーン2
 で、この時シェーンは死んでいたのかどうか。「殴り込み」に行ってシェーンは撃たれています。ジョーイが「出血している」と言っていることからも明らか。撃たれて傷を負ったシェーンは馬に乗って去って行く問題のシーン。普通であれば両手で手綱を握るのでしょうが、どう見ても馬に乗ったシェーンの左腕が姿不自然です。銃撃の出血で前後不覚?、死んでいないにしても最早意識が無い、死の一歩手前というのが「シェーン死亡説」の根拠ではないかと思います。シェーンを殺して何かメリットがあるのか?という問題です。マリアンは銃の無い世界を願っており、息子ジョーイがシェーンに憧れることを嫌っています。シェーン自信、この「殴り込み」で銃の無い世界が訪れたことをジョーイに告げています。映画としては、ガンマンのシェーンが死ぬことで、古い「西部」の終焉しマリアンが願った世界が実現したことを言いたかったのかもしれません。という事で、『交渉人』のセイビアンの「シェーン死亡説」は◎。

監督:ジョージ・スティーヴンス
出演:アラン・ラッド ヴァン・ヘフリン ジーン・アーサー

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台風24号 [日記(2018)]

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 我家直撃の雰囲気です。先日の21号で屋根瓦を飛ばされた身には、勘弁してほしいというところです。
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 ファーストエイド・キット               災害用ラジオ

タグ:絵日記
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映画 黄金(1948米) [日記(2018)]

黄金 [DVD]  ジョン・ヒューストン監督、ハンフリー・ボガード主演の、「因果応報」ドラマとしか言いようのない映画です。言わんとすることは明快、悪行は報いを受ける、割に合わない!。『カサブランカ』のボギーがアクの強い悪役を演じます。

 今日の食事もままならないダブズ(ハンフリー・ボガード)とカーティン(ティム・ホルト)は、メキシコの木賃宿で金鉱探しの山師ハワード(ウォルター・ヒューストン)と出会います。三人はひと山当てるために山に分け入り、難なく金鉱を見つけます。この映画は、大金を掴んだ後の三人がテーマですから、金を手に入れるまでの話はかなりご都合主義。

 三人は、掘った金を等分しそれぞれの秘密の場所に隠します。ダブズは他の二人が自分の金を狙っていると疑心暗鬼に陥る始末。ひとり2万5千ドルの金を採掘し、ハワードとカーティンこれで十分ではないかと山を下りることを提案しますが、ダブズは出資比率に応じて金を分配しろだとか、7万5千ドル貯まるまで山を下りないと強欲なところを見せなす。メキシコの街では人のいいダブズも、大金を手にした途端人間が変わったというよくある話です。
 金を何に使うかという話になり、ハワードは小さな食料品店を開き余生を送る、カーティンは桃の果樹園を経営と、いずれも堅実な人生設計を語ります。ダブズはというと、衣服を買い美味いものを食べると享楽的。大金を手にした小悪党ダブズの転落の物語です。

 大金を手にした三人に様々な事件が起こります。

 コーディという男がキャンプに現れ、自分を仲間に加え採掘した金の25%を要求し、追い返せば役人に不法採掘を訴えると脅します。ダブズはコーディを殺すことを主張し三人は銃を手にしますが、メキシコ山賊にキャンプが発見され銃撃戦。4人は山賊を撃退しますが、コーディは撃たれて死にます。金山に向かう途中の、三人の乗る列車が山賊に襲われますから、辻褄は合っていなくもない。ハワードとコーディは採掘した金の25%をコーディの遺族に贈ることを提案しますが、ダブズは当然反対。ひとり3万5千ドルの金をロバに積んで三人は下山します。

 続いて、下山途中意識不明に陥った少年を助けてくれという村民が現れ、ハワードは金をケーティンとダブズに預け村に向かいます。ダブズはこれ幸いと、ハワードの金を山分けしようと言い出し、何処までも利己的で倫理観のカケラもない小悪党を、ハンフリー・ボガードがなかなかの迫力で演じます。 

 ハワードは少年を蘇生させ、村人からは神のように崇められます。ダブズはカーティンを殺し金を独り占め。ところが殺したはずのカーティンは生きていて村人に助けられハワードとダブズを追います。「悪銭身につかず」の言葉通り、ダブズは山賊に襲われあっけなく命を落とします。結局金はハワードとカーティンふたりのものか?、さにあらずラストは『地下室のメロディー』です。元の一文無しに戻ったふたりですが、ハワードは助けた少年の村で長老となることに決め、カーティンは、死んだコーディの遺族の元(桃の果樹園)に遺品を届けるために、新しい一歩を踏み出します。随分「教訓的」な話で笑ってしまいます。

監督:ジョン・ヒューストン
出演:ハンフリー・ボガード ウォルター・ヒューストン ティム・ホルト

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