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BSシネマ 馬上の二人(1961米) [日記(2013)]

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 原題は“Two Rode Together”。
 騎兵隊もインディアンも登場しますが、一発の銃声もしない(一発だけありますが)不思議な西部劇です。ジョン・フォードには『捜索者(1956年)』というコマンチ族に浚われた姪を救出する映画がありますが、『馬上の二人』はこの『捜索者』の同工異曲です。コマンチ族にさらわれた白人娘と娘を救いだした保安官のすこし辛口のラブストーリーです。
 
 『ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990)』も北軍中尉とスー族にさらわれた白人女性「拳を握って立つ女」の物語でした。『ソルジャー・ブルー(1970)』でキャンディス・バーゲンが演じたクレスタもシャイアン族にさらわれインディアンとして育った女性です。いずれも、異文化で育った人間が白人社会に入ったことで起こる軋轢を、(どちらかと言うと)インディアンの眼から描いています。『捜索者』はジョン・ウェインの映画ですから、そういう視点はありません。『馬上の二人』では、コマンチ族から救け出された女性が、白人の蔑視に耐えて自立してゆくという物語です。同じジョン・フォードでも、『捜索者』は西部劇ですが、『馬上の二人』は通常の西部劇のジャンルには入りません。

 『馬上の二人』とは、保安官のガスリー・マケーブ(ジェームズ・スチュアート)と、騎兵隊中尉ジム・ゲイリー(リチャード・ウィドマーク)のふたりです。ジムは上官の命令でマケーブを騎兵隊の砦に連れてきます。マケーブは1ヶ月80ドルで無理やり中尉として騎兵隊に採用され、コマンチ族にさらわれた白人の子供の探索を命じられます。
 コマンチ族との豊富な交渉経験が買われたわけです。さらわれて10年15年経っていますから、女の子ならコマンチ族の男性と結婚し子供の2人や3人いるはずで、男子なら白人の頭の皮を剥ぐ立派なコマンチの戦士になっているはず。今更白人社会に連れてきても最早手遅れで止めたほうがいいというのがマケーブの意見です。おまけに、80ドルではやっていられないという不満もあります。
 一方砦には、子供をさらわれた親たちが、マケーブに熱い視線を注いでいるという状況で、金銭に執着するマケーブは、白人1人につき500ドルの報酬でこの仕事を引き受けます。ジェームズ・スチュアートは、ハリウッドの優等生。映画の方も『素晴らしき哉、人生!』や『スミス都へ行く』など優等生を地でゆく作品があり、酒に眼がなく金銭に汚いというのはちょっと違和感があります。リチャード・ウィドマークがどうからむかと云うと、騎兵隊から派遣されたマケーブのお目付け役です。このふたりは、役柄が逆じゃないかとも思うのですが。

 コマンチ族の部落に行き、ライフルと交換に青年と若い女性エレーナ(リンダ・クリスタル)のふたりを救出します。また、マケーブとジムは長年コマンチの妻として暮らした白人の老女に出会いますが、今更夫と子供の元には帰れないというわけで、彼女は救出を拒みます。
 ここまでがネタ振りで、映画の主題はこの青年とエレーナが白人社会に戻ってから始まります。青年は英語も喋れず、自分がコマンチであると信じ、白人社会に連れ戻されることに抵抗します。青年は、自分の子供に違いないと信じる婦人に引き取られますが、夫人を殺して逃げて捕まり吊るし首となります。

 救出されたもうひとりエレーナは、コマンチの妻となっていたのですが、自分の意思で白人社会に戻ります。大きくなってさらわれたエレーナは、青年の様にコマンチにはなりきれず、何時の日か白馬の騎士が救出に現れると信じていたとのこと。マケーブが白馬の騎士だったわけです。白人社会に戻ったエレーナは、コマンチと結婚していたのか、子供はいたのか等人々から好奇の眼で見られます。終いには、何故自殺しなかったのかと云う非難の眼差しに変わってゆきます。

 このインディアンにさらわれた女性の悲劇を、エレーナは如何に克服したか、マケーブはどうかかわったのか、というのが『馬上の二人』の主題です。
 エレーナは信仰上の理由で自殺をせず、自殺より辛いコマンチの妻である境遇に耐えたわけです。その境遇からやっと抜け出したと思った途端、同類である白人から思いもかけない差別に見舞われます。これを傍で見ていたマケーブは...となるわけです。1961年の西部劇ですから、あまり複雑なストーリーや残酷な結末は用意されていません。エレーナは、新天地カリフォルニアを目指して旅立ち、マケーブはその後を追います。

 「馬上の二人」とは、だれが考えてもマケーブとジムのふたりですが、マケーブとエレーナと考えても全然おかしくないですね。むしろそう考えるほうが自然です。
 で、お薦めかと云うと、『捜索者』から『馬上の二人』へ、そして『ソルジャー・ブルー(1970)』を経て『ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990)』へ至るちょっと変わった西部劇と云う意味ではお薦めです。

監督:ジョン・フォード
出演:ジェームズ・スチュアート リチャード・ウィドマーク リンダ・クリスタル  シャーリー・ジョーンズ

タグ:BSシネマ
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どんぐり

先日、この映画をTVにて観ましたが、こちらの解説と評論がとても気に入りました。
ありがとう。

by どんぐり (2019-03-18 21:04) 

べっちゃん

コメントをありがとうございます。ジョン・フォードの西部劇は、人間に対する暖かい視線が感じられますね。
by べっちゃん (2019-03-20 06:28) 

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