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映画 終電車(1980仏) [日記(2019)]

終電車 Blu-ray  原題”Le Dernier Metro”。タイトルが『終電車』で、カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワ・トリュフォーの仏映画とくれば、誰だってこれはもう「アレ」だと思いますねぇ。ところが、終電車は登場しません。冒頭で、ナチスに占領された夜間外出禁止令が敷かれたパリは、映画、演劇がハネた後、観客は終電車に急いだというナレーションが入ります。観劇を終えた男女が終電車で出逢い…というわけでがありません。

マリオンとベルナール
 舞台は1942年ナチスに占領されたパリ。モンマルトル劇場のオーナーで演出家のルカは、ユダヤ人のために海外に逃亡、劇場は妻で女優のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)が支えています。マリオンは、ルカの脚本『消えた女』を上演するするため、相手役として男優ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)と契約します。ジェラール・ドパルデューは、『あるいは裏切りという名の犬』(オススメ)の容貌魁偉のはみ出し刑事、『シラノ・ド・ベルジュラック』の鼻のシラノです。1980年ですからさすが若い、特徴的な鼻は隠すべくもありませんが…。冒頭で、ベルナールは路上で女性を口説いていますから女たらし。このドパルデューと美女ドヌーヴの競演となります。
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 海外逃亡を図ったルカは、実はマリオンがモンマルトル劇場の地下に匿っています。ルカは地下室で『消えた女』の舞台稽古を聞き、マリオンを通じて演出します。表ではナチスが支配しているように見えるが、実はフランス人がすべてを仕切っているのだということでしょうか。

劇中劇
 脚本はナチス検閲があり、ナチスに協力するフランス人にすり寄って検閲を通すという苦労があります。ナチスの文化政策をかいくぐって作られたマルセル・カルネの『天井桟敷の人々』を連想します。『天井桟敷』でも劇中劇が演じられ、『終電車』でも劇中劇『消えた女』演じられます。ということは、この映画は『天井桟敷』へのオマージュ?。であれば、ガランスとバチストの関係はマリオンとベルナールの関係ということになります。ところがふたりの恋愛は微塵も描かれません。モンマルトル劇場のオーナーで看板女優のマリオンは、ナチスにも時代にも媚びず凛とした姿勢で劇場を守り、かくまった夫を甲斐甲斐しく世話します。一方のベルナールは、劇場の美術担当を熱心に口説く有り様。美術担当は実は同性愛者で、これを知ったマリオンは「恋愛は劇場の外でやって!」と厳しい態度。舞台稽古でベルナールに触られることも嫌います。

 劇中劇『消えた女』では、男(ベルナール)の愛を愛される資格がないと女(マリオン)が拒む、実は女も愛しているが…というような劇です。

ふたりの女
 『消えた女』はナチス寄りの批評家にけなされますが興行的には大成功をおさめ、劇場の所有権を巡って取り潰しの危機に瀕し、ルカを探してゲシュタポが現れ…等々、マリオンに時代の波が襲いかかります。女たらしのベルナールは実はレジスタンスで、戦局急を告げるなか、レジスタンスに専念するため劇場を辞めます。面白いことに、ルカは地下でふたりの演技を聞いている間に、マリオンがベルナールを愛していることを見抜いています。ゲシュタポが地下室に踏み込んだ時、ルカとベルナールは初めて顔を会わせ、ベルナールにこれを告げます、「妻は君に惚れている」。
 ベルナールが劇場を去る日、ふたりは結ばれます。エッそう云うこと?、忍ぶ恋?。そう思って観ると、マリオンのベルナールに対する態度は不自然。惹かれまいとする頑なさが随所に現れています。

 ベルナール得意の口説き文句”あなたの中にはふたりの女がいる” →これが主題です。マリオンのなかに、ベルナールに惹かれる女と夫を愛し劇場を護る女優がいたわけです。何のことはない、映画の冒頭からこの科白はあったのです(ベルナールが通りすがりの女を口説くシーン)。

 ここからがフランス映画のフランス映画たるところ。ナチスはパリから撤退し、マリオンは、レジスタンス活動で負傷したベルナールを病院に見舞います。あなたを忘れられないと言うマリオンに、愛している振りをしていたんだとベルナールは答え、(病院の窓から見える背景に注目!)…病室はモンマルトル劇場の舞台に変じ、ふたりの会話は劇中劇の科白ととなります。フィナーレでルカが登場し、カーテンコールでマリオンはベルナールとルカの手を取ります。右にルカ左にベルナール、”マリオンの中のふたりの女がいる”シーンで幕。

 なかなか意味深長な映画で、トリュフォーとドヌーヴは一時恋愛関係にあったと言いますから、”あなたの中にはふたりの女がいる”は、以外と本音かも知れません。

 久々に「フランス映画」を観たという実感、それにしてもカトリーヌ・ドヌーヴは綺麗。

監督:フランソワ・トリュフォー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジェラール・ドパルデュー

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コメント 2

Lee

筋の懲りように圧倒、さすがフランスですね。素晴らしい解説をありがとうございました、絶対みてみます。
by Lee (2019-05-21 08:25) 

べっちゃん

いつも訪問頂いてありがとうございます。アメリカ映画とは一味も二味も違います。『天井桟敷の人々』も是非。
by べっちゃん (2019-05-21 08:47) 

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