So-net無料ブログ作成
日記(2019) ブログトップ
前の10件 | -

木内  昇 新選組 幕末の青嵐 [日記(2019)]

新選組 幕末の青嵐 (集英社文庫)  「新選組」には、子母沢寛の三部作、司馬遼太郎の『燃えよ剣』『血風録』、浅田次郎の『壬生義士伝』などの名作が目白押し。時代劇ファンなら、新選組の成立から消滅まで大まかな知識はあります。この書き尽くされた感のある、読者にとっては常識ともなっている新選組をどう料理するかです。

 清河八郎の浪士組募集に近藤以下試衛館の面々が加わって京都を目指す新選組前史から、鳥羽伏見の戦いを経て五稜郭の土方の死まで、その消長が時間軸に沿って42のエピソードで描かれます。工夫のひとつは、例えば芹沢鴨の粛清事件で主人公は芹沢自身。清河八郎の裏切りで浪士隊は江戸に帰り、京都には近藤の試衛館組と芹沢一派の十数人が取り残されます。着の身着のまま、明日の食い扶持もままならぬ芹沢の、
京という都に佇んで我が身を思うと、己の矮小さを突きつけられる気がした
などと云う独白を聞かされると、傲岸で乱暴、無軌道な芹沢鴨のイメージが崩れてしまいます。芹沢は京都守護職・松平容保に嘆願書を出して会津藩という後ろ盾を得ますから、新選組を作ったのは芹沢鴨ということになります。(壬生浪士組 芹沢鴨)


 藤堂が山南切腹の真相を土方に問い詰めるシーンです。藤堂は、土方が殺したと思っているわけで、
ー土方を斬らねば駄目だ・・・握りしめた拳に汗が滲む。傍らに置いた大刀の位置を図る。目が、座している土方の袴を見る。間合いは三尺。
 ドン、と凄まじい音で床が鳴って、集中しきっていた藤堂は虚を突かれ、・・・
 斎藤が刀の鞘で床を突き藤堂の気を逸したのです。緊張と緩和、映画のワンシーンを見るようで上手いです。(焦燥 藤堂平助)

 脇役の永倉新八、斎藤一、原田左之助、井上源三郎などお馴染みの人物がエピソードの主人公として内面を吐露します。土方の本音は、同郷日野の井上源三郎によって語られます。新選組の消長の物語を、隊士のエピソードを積み重ねることで描こうというわけです。
 ストーリー展開は、やや軽忽だが将器のある近藤を頭に据え、土方が参謀として組織作りを担うというお馴染みの構図です。時代物ですが、分派活動に走った伊東甲子太郎の暗殺あたりになると現代風サスペンスです。土方は、永倉と斎藤を近づけて伊東を安心させ、御陵衛士が結成されると、伊東に心服している永倉を戻し寝返る心配のない斎藤をスパイとして送り込みます。勤王に走った伊東から薩長の情報が新選組に流れるという諜報ルートを作り上げます。策士、参謀、土方歳三の面目如実です。結局、伊東は新選組によって暗殺されることになります(油小路事件)。

 気になったので主要人物の年齢を調べてみました(wikipedia)。1864年の池田屋事件当時の年齢です。
 近藤勇(30歳)、土方歳三(29歳)、山南敬助(31歳)、沖田総司(22歳)、永倉新八(25歳)、斎藤一(20歳)、井上源三郎(35歳)、藤堂平助(20歳)、原田左之助(24歳)。
 もう少し歳をとっていたと思っていましたがいずれも若いですね。沖田総司が22歳とは以外。もっと若いと思っていたのですが、22歳で子供と壬生寺の境内で子供と遊ぶ天真爛漫は小説通りでしょう。藤堂平助と『一刀斎夢録』の斎藤一がナント二十歳。二十歳そこそこの若者が京洛の巷で剣をふるっていたことになります。京都で火炎瓶を投げていたのも二十歳前後の若者ですから、辻褄は合ってます(笑。何より驚くのは、新選組結成から崩壊までわずか5年。新時代の到来に背き、反革命の人斬り集団・新選組に惹かれるのは、幕末を疾風怒濤の如く駆け抜けた彼等の短い青春にあるのでしょう。

 女性が登場せず京都の風土が希薄なところはやや不満ですが、1日半で読了したのですからそれなりに面白いです。木内  昇(のぼり)さん、女性なんですね。格好の「新選組」入門書かもしれません。

タグ:読書
nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

高橋和巳 憂鬱なる党派 ② (1965-2016河出文庫) [日記(2019)]

  憂鬱なる党派 下 (河出文庫)続きです。
蹉跌
 今では殆ど読まれることのない高橋和巳の思弁的な小説です。登場人物が思弁し、あるいは思想、主義と言い換えていいものに絡め取られて蹉跌し破滅する物語です。面白いことは面白いのですが正直疲れる小説です。

 西村の出現によって、古在以下6人はそれぞれの青春と、卒業後の社会で青春がもたらした現実と向き合うこととなります。
 劣等感を克服するために政治の世界にのめり込み、査問とリンチによって同志を自殺に追い込んだ青春は、病と社会と隔絶された孤独をもたらします。何事かを告白するために訪れた友人を拒絶し自殺に追い込んだ青春は、留学のため家族を捨てる岐路に立たされます。国家に裏切られ享楽と理想の間で揺れる元特攻兵の青春は、不毛な愛と横領に躓きます。『憂鬱なる党派』の面々は、青春の夢と蹉跌の因果を噛みしめることとなり、何処で、何に躓いたのか?と自らに問います。

罪と罰
 西村は大阪の場末釜ヶ崎の簡易旅館に身を寄せます。旅館の女主人の息子の挿話が象徴的に語られます。息子は、復員後南方の戦場に自身を置き忘れ、復員して日本に帰ったことが自覚できず精神病院で死にます。生死の境をさ迷う過酷な戦争体験は、この男の精神を破壊しました。これは、原爆投下直後の広島に自身を置き忘れてきた西村の姿でもあるわけです。

 西村と友人たちの交流と並行して、彼が身を寄せる貧民街の簡易旅館とそこに暮らす人々が描かれます。売春宿を経営する元一銭芸者、彼女が抱える娼婦たち、ハサミ一丁の出張散髪屋、大工とは名ばかりの便利屋とその一家、などなど簡易旅館の住人たちです。貧民窟とそこに暮らす人々の描写は、読者に生き生きと迫ります。それは、作者の故郷でもある大阪南部の下町の風景であり、『邪宗門』『捨て子物語』などで繰り返し描かれる作者の原風景です。彼等は、自らをインテリゲンチャとする西村たちの対極にあり、この観念小説の青臭い論議を骨抜きにします。

 西村の書いた「伝記」の出版は潰え、友人達との再会はお互いの過去の傷口を広げただけに終わります。出口を失った彼のもと妻がふたりの子供を連れて訪れます。妻は、西村が妻子を捨てたように、夫とふたりの子供を捨てます。作者は、平穏な生活を捨てて原爆で死んだ36人の伝記を書いた西村の「罪」を罰するように、貧民窟で乳飲み子と幼い娘を抱える西村の堕落と滅びを描きます。
 この「罪と罰」は、「知」の綻びから破滅する『悲の器』の正木典膳、地上の楽園を目指し滅びる『邪宗門』の千葉潔、革命資金を得るために強盗をはたらき、裁判所の前で車に轢かれる『日本の悪霊』の村瀬狷介の「罪と罰」です。

 ラストで西村の罪、堕落と破滅が描かれます。何故、原爆で死んだ長屋の住人36人の列伝を書いたのかが西村の口から明らかにされます。日本は、敗戦から十数年がたち、サンフランシスコ講和条約によって日本の主権は回復され、朝鮮戦争の特需によって経済的復興も果たされます。1956年の『経済白書』には「もはや戦後ではない」と記されます。西村は、

この世の人々の悲しい右顧左眄、哀れな東奔西走、すべて自らの原点、自己の絶対性の喪失からくるものと認め、己ひとりなりとも、時流の変化、洞窟の壁に映る影のうつろいに動ずることなき価値体系を築こうと

36人の伝記を書いたのです。36人の列伝を書くことで、知識人が知識人であることの存在理由(レゾンデートル)を見出そうとしたわけです。その志の帰結が、乳幼児は貧民街の女たちの母乳に頼り、幼い娘は娼婦や簡易旅館の女将の施しに頼り、日雇いで得た僅かな金は安酒に消えるという堕落だったわけです。行き場を失った怒りと後悔のなかで、西村は1961年の「釜ヶ崎暴動」の群衆のなかで労務者を扇動します。

破滅
 原爆症が進行する身体で、西村は何故堕落し滅びねばならなかったのかという理由、「広島」の真実(高橋版『蛍の墓』)を娼婦に伝え、簡易旅館の一室で息を引き取ります。娼婦は、西村の遺品から見つかった名刺を頼りに電話をかけます。
 古在は労働争議の末業界新聞を去り、藤堂は刑務所、日浦は結婚のため職場に不在、青戸は留学のため渡米、村瀬は自殺、岡屋敷は病死、『憂鬱なる党派』の解体された姿です(転向し放送局に勤める蒔田とは連絡がつきます)。娼婦千代の うちは何のために生きてるんやろ。の呟きで幕。

 娼婦千代は、『悲の器』では主人公の妹、『邪宗門』では跛の女性教祖など「救い」のイメージとして登場する女性たちのひとりです。主人公たちはすべて罪を背負って破滅してゆきます。高橋和巳が生きながらえていたなら、彼女たちがイメージを超えて復権する小説が書かれた筈です。生硬な文体で書かれたこの小説を近年のベストセラー小説の中に置いてみると、古色蒼然ではあるものの、不思議な光芒を放ちます。

タグ:読書
nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

映画 スパイ・ゲーム(2001米) [日記(2019)]

スパイ・ゲーム [DVD]  ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピットの新旧二大スターによるエスピオナージ映画、監督はトニー・スコットです。

 中国蘇州の刑務所から幕があきます。CIAエージェントのビショップ(ブラッド・ピット)は刑務所から何者かを脱獄させようと企て捕まります。ビショップの行動はCIAの作戦ではなく個人的なもの。米中の経済会議が開かれようという時に、CIAが中国で非合法活動をするわけですから外交問題に発展することは必至。この報が、ビショップのかつての上司ミュアー(ロバート・レッドフォード)に入ります。ミュアーの定年退職当日の話です。ビショップは24時間で死刑となり、ミュアー自身もその日でCIAを退職、たった1日でビショップを救うこと出来るのか?。ビショップは誰を何のために助けようとしたのか?、どうも女性らしい、ビショップと女性の関係は?。CIA本部にいるミュアーは、太平洋を隔てた蘇州のビショップを如何なる方法で救うのか?。たたみ込むようなオープニングで観客を映画に引き込む手並みはさすが!。

 CIA本部ではミュアーも加わって対策会議が開かれ、ベトナム戦争まで遡ってビショップとの関係をが描かれ、ビショップの背景が明らかにされます。CIAエージェントのミュアーはラオスの将軍暗殺にビショップを使い、その後ビショップをCIAに引き抜きスパイ技術を叩き込みます。ミュアーにとってビショップは部下以上の愛弟子というわけです。ビショップは、冷戦下の東ドイツ、中東とミュアーの作戦に欠かせない工作員として活躍します。東側と通じた大使夫人に、なんとシャーロット・ランプリングが出演しています。折角のシャーロット・ランプリングですから、もう少し使い方があると思うのは私だけ?。

 CIAに忠実なミュアーに比べ、ビショップは任務に私情を挟むエージェント。ベイルートで大物テロリストの暗殺作戦が企てられ、ミュアーとビショップが従事します。ビショップは、この作戦でNGOのエリザベス(キャサリン・マコーマック)と知り合い愛するようになります。エリザベスはNGO活動の延長でロンドンの中国大使館爆破に関係し、中国に拉致され刑務所に収監されていたのです。ビショップはエリザベスを救うため蘇州刑務所に侵入したわけです。
 刑務所襲撃はビショップの個人的な行為ですから、CIAは彼を助けようとはしません。暗殺まで検討されるにいたって、ミュアーは密かにビショップ救出を画策します。CIAに忠誠のミュアーが、初めて私情を挟んだ作戦、米本土から蘇州のCIA工作員を救出する「ディナー作戦」を敢行します、それも単独で…。そんなことが出来るのか?。出来過ぎた話ではあるわけですが、これはこれでナルホドと感心させられます。お薦めです。

監督:トニー・スコット
出演:ロバート・レッドフォード ブラッド・ピット キャサリン・マコーマック

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

高橋和巳 憂鬱なる党派 ① (1965-2016河出文庫) [日記(2019)]

憂鬱なる党派 上 (河出文庫)  私立女子高校の英語教師・西村は、突然職を捨て妻子を捨てて放浪の旅に出、学生時代の友人達の住む都市(大坂)にやって来ます。理由のない憤怒に駆られ、5年の歳月をかけた原爆で亡くなった36人の平凡な庶民の列伝を書き、それを出版するためです。大学を卒業して7年、主人公が「微笑と闘争、羞恥と屈辱に満ちていた学生時代」の友人と再会する物語です。西村が大阪を訪れるのは1960年頃と思われ、西村が学生時代を過ごしたのは1950年代半ば。卒業し社会に出て30代となった主人公たちが、学生時代を振り返るという設定です。

時代背景
 上巻の「作品の背景」にも触れられていますが、彼らが過ごした学生時代とは如何なる時代だったのか。

1945年:敗戦
1948年:全学連結成
1949年:中華人民共和国成立
1950年:日本共産党、非合法化、レッドパージ。コミンフォルムの共産党を批判により共産党分裂。警察予備隊設置。
1951年:サンフランシスコ講和条約、所感派、武装闘争路線へ(山村工作隊、中核自衛隊)
1952年:血のメーデー事件、吹田事件
1955年:六全協(武装闘争破棄)

 中華人民共和国成立によって連合国=アメリカの占領政策が変わり、日本共産党は非合法化されます。コミンフォルムによって日本共産党は平和革命路線を批判されから武装闘争路線に梶を切り、共産党は分裂します。大学自治会の連合体である全学連はこの武装闘争路線に加わり、血のメーデー事件、吹田事件などを起こし、1955年の六全協によって武装闘争路線は破棄されます。この「政治の季節」の学園に身を置いた政治青年たちの、過去と現在が語られます。

憂鬱なる党派人たち
西村:本編の主人公。卒業後郷里広島に帰り女子高校の英語教師となる。原爆で父母と妹を失っている。憤怒とに駆られ5年の歳月をかけて原爆で亡くなった36人の庶民の列伝を書き、出版するために妻子を捨てかつての友人を頼って来阪。学生時代は自由主義のサークル文学哲学研究会を組織。

古在:西村の旧制高校、大学の旧友。大学時代は京大共産党細胞の元キャップ、理論家。後除名されて西村のグループに加わる。現在は業界新聞の編集者、新聞社を労働者の自治組織へと変える運動を主導。

青戸:西村グループのメンバー。共産党系の自治会が潰れた後、自治会を牽引。大学に残り、現在は心理学科の気鋭の助手。社会変革は、革命ではなく職業人の専門領域の深耕によってしかなし得ないとするリアリスト。

岡屋敷:元共産党京大細胞のキャップ。党員として学生運動を指導。留置所、山村工作隊、労働会館・資料室を経て肺結核を病み病床にある。
日浦:ミッション系女子大から西村グループに加わった紅一点。30歳のオールドミスの学校教師。
藤堂:生命保険会社の外務員から本社の正規社員に転身。特攻兵あがりの異色の経歴を持つ西村グループのメンバー。敗戦による価値転換から政治を信じず、自らを怠惰で享楽的なノンポリと規定。
村瀬:共産党員。大学ストを扇動し停学となるが、西村グループ助けられる。吹田事件で起訴され退学、判決待ち保釈中。電力会社の僻地保守要員から、語学力を買われ本社の翻訳担当となるが退職。現在は町工場の工員。

蒔田:元共産党員。古在とともに除名され転向。熱心な就活が実って在阪の放送局に就職。

 文学哲学研究会と共産党京大細胞は、たまたまボックス(部室)が隣り合っていたため交流が生まれ、全学ストライキで停学処分となった村瀬等の救済活動通じて7人の交流が深まります。『憂鬱なる党派』とは共産党ではなく、この7人の政治青年グループを指します。
 西村が彼らを訪れることによって、7人はそれぞれ自らの青春の蹉跌と、青春が過ぎ去ったあとの苦い現実に向き合うことになります。
 続きます

タグ:読書
nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:

映画 クワイエット・プレイス(2018米) [日記(2019)]

クワイエット・プレイス [AmazonDVDコレクション]  エイリアンの地球侵略ものです。少し変わっているのは、このエイリアンは視覚でも嗅覚でもなく(盲目)、発達した聴覚で獲物(すなわち人間)を狩るというエイリアン。人類は音をたてず声をひそめ地下室に籠もり滅亡の淵にあるという設定です。従って登場人物の会話は手話、映画はほぼサイレント。
 エイリアンものですが、描かれるのは「家族」です。叫ぶ呻く泣くという感情の原初的な表出が出来ず、言葉を奪われた中で家族はどうやって絆を結ぶのか?、これもテーマです。

 父母と三人の子供が物資調達の帰路、4歳の次男が玩具を鳴らしたためエイリアンに襲われ亡くなります。画面をかすめるように登場したエイリアンは、終盤でその姿を現すまで全貌は分からず、恐怖の源泉としてこの映画を支配し続けるという構図です。出るぞ出るぞでも出ない、という観客の想像力に訴えるホラーの常道を使い、音を立てれば、声を出せば襲われるという恐怖を、サイレントで増幅しようというのがこの映画のミソ。

 その恐怖が臨月の母親のエミリー・ブラントに凝縮されます。出産の苦痛で叫び声をあげればエイリアンが襲ってきます。赤ん坊が生まれれば、当然赤ん坊は泣き、エイリアンが襲ってきます。母親はどうやって出産し赤ん坊を守ったのか。答えは花火。父親は息子に花火をあげさせ、エイリアンを家から離れた場所に誘導し、その間に赤ん坊は無事産まれます。

 ネタバレ...。全編通じて「音」がキーワード。エイリアンは音を頼りに人間を襲うという習性を逆に使い、音を使ってエイリアンから逃れ、音でエイリアンを撃退します。聴覚の発達したエイリアンは、コウモリように人間の可聴範囲を超える音を発し、その反射で対象を識別しています。これに気づいた長女は、超音波を使って家に侵入したエイリアンを撃退し、母親はひるんだエイリアンを銃で撃ち殺します。銃声を聞きつけてエイリアンの群れが家に集まってくるシーンで、幕。to be continuedというわけです。

 なかなか良く出来た映画で、おすすめです。ヒットしたようで、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスーを迎えて続編が2020年3月に公開されるようです。

監督:ジョン・クラシンスキー
出演:エミリー・ブラント ジョン・クラシンスキー ミリセント・シモンズ

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

白井 聡 国体論 ―菊と星条旗―  (2018集英社新書) [日記(2019)]

国体論 菊と星条旗 (集英社新書)
 2022年には、明治維新から敗戦までの時間(近代前期)と敗戦から現代までの時間(近代後期)が同じなります。ちなみに2018年は明治維新150年にあたります。1945年の敗戦によって近代前期の国体「天皇制(絶対主義)」は終り、日本は民主主義国家に生まれ変わったと云うのが常識です。本書は、近代前期の国体が姿を変えて(モデルチェンジして)近代後期も続いているのだと言います。「元首ニシテ統治権を 総攬 」する天皇は、「象徴」としての天皇に代わりますが、天皇は引き続き存在してきたわけですから、「天皇制」を国体と言うなら国体は戦前戦後を通じ続いているとも言えます。
 近代前期の国体の形成→発展→崩壊を分析し、近代後期の国体の行く末を見極めようというのが本書です。近代後期の国体は何処へ向かっているのか、敗戦のような悲惨な結末を迎えようとしているのか、というわけです。
 
章立て
第一章 「お言葉」は何を語ったのか
第二章 国体は二度死ぬ
第三章 近代国家の建設と国体の誕生 (戦前レジーム:形成期)
第四章 菊と星条旗の結合 (戦後レジーム:形成期①)
第五章 国体護持の政治神学 (戦後レジーム:形成期②)
第六章 「理想の時代」とその蹉跌 (戦後レジーム:形成期③)
第七章 国体の不可視化から崩壊へ (戦前レジーム:相対的安定期~崩壊期)
第八章 「日本のアメリカ」ー「戦後の国体」の終着点 (戦後レジーム:相対的安定期~崩壊期)
終 章 国体の幻想とその力

国体護持の政治神学
(第五章)
 戦争終結のポツダム宣言を、日本は国体(天皇制)護持のため受け入れ、占領軍(アメリカ)は占領政策を円滑に進めるため天皇の権威を利用します。この構図を著者は坂口安吾『堕落論(1946)』から引用します、

 
天皇制というものは日本歴史を貫く一つの制度ではあったけれども、天皇の尊厳というものは常に利用者の道具にすぎず、真に実在したためしはなかった。
 藤原氏や将軍家にとって何がために天皇制が必要であったか。何が故に彼ら自身が最高の主権を握らなかったか。それは彼等が自ら主権を握るよりも、天皇制が都合がよかったからで、彼らは自分自身が天下に号令するよりも、天皇に号令させ、自分がまずまっさきにその号令に服従してみせることによって号令が更によく行きわたることを心得ていた。その天皇の号令とは天皇自身の意志ではなく、実は彼等の号令であり、彼等は自分の欲するところを天皇の名に於いて行い、自分が先ずまっさきにその号令に服してみせる、自分が天皇に服す範を人民に押しつけることによって、自分の号令を押しつけるのである。

 占領軍は、日本のこの古くからある国体と政体の政治のメカニズムを利用したのです。天皇と将軍の関係を、天皇と軍部に置き換えれば戦前の国家主義の日本となり、天皇とマッカーサーに置き換えれば民主国家日本となるわけです。「国体」は護持され、見事に「菊と星条旗の結合」が為されたことになります。ジョン・ダワーはこの民主主義を「天皇制民主主義」と呼んだそうです。

「庇護」から「収奪」へ
 本書では、敗戦から占領、新憲法の発布の過程は、「天皇制」という国体が「アメリカ制」という国体に「モデルチェンジ」した過程(永続敗戦レジューム)と捉えます。サンフランシスコ講和条約によって占領は終結しますが、同時に日米安保条約が結ばれ、「アメリカ制」国体が闊歩しだします。政治が自己を仮託する虚構(幻想)を国体と呼ぶなら、天皇がアメリカにすり替わったことは不思議でも何でもありません。

 このアメリカ制国体の下で、軍事費を減免された日本は経済発展を遂げ、アメリカの庇護の下「平和と繁栄」に酔うわけですから、アメリカ制国体を支える政権保守層はますます対米従属を政策の基本とします。対米従属の蹉跌の第1が、バブルの崩壊。1991年に始まるバブル崩壊以降日本の右肩上がりの成長は終わりを告げます。

冷静に見れば、西欧諸国やアメリカ合衆国と同様に・・・日本の国民経済が構造的に成熟することで高度成長が望めなくなった段階に入ったことを意味した。
戦後日本にとって、「経済成長」は「豊かになること」以上の意味を持っていた。・・・なぜなら、そこにこそ、敗戦という巨大な挫折からの民族の再起という、戦後日本の物語が懸けられていたからである。

さらに追い打ちをかけるのが、東西冷戦の終焉です(第2の蹉跌)。ソ連及び社会主義陣営の崩壊によって、アメリカが日本を庇護する理由は消滅します。

「日米構造協議」が始まるのは、1989年のことであるが、この流れは後に「日米包括経済協議」、さらには・・・TTP協定へと発展し、そこからアメリカが離脱したことにより今後は日米FTA協議へと展開することが有力視されている・・・
これらの協議では、公正な貿易によってアメリカの対日貿易赤字の削減を図ると称して、新自由主義的な政策の採用を強いる内政干渉的ですらある要求が突きつけられてきた。・・・
こうした推移が意味するのは、要するに、アメリカの対日姿勢の基礎が「庇護」から「収奪」へと転換したということである・・・
超大国の超大国たる所以は、衰退局面にあってもそのツケを他国に廻すことができるという点にある。

 久々に、刺激的で面白い本に出会いました。安倍首相がトランプに尻尾を振る理由が分かりました。尻尾を振った先にあるものが「収奪」だとすれば(ありえますねぇ)、背筋が寒くなります。世論調査では、政治に望むもののトップは常に経済あるいは景気です。物質的「豊かさ」を心の「豊かさ」に置き換えるという、パラダイムの転換の次期かもしれません(とは書いてませんが)。  パラダイムの転換を安倍政権に求めても無駄ですが。

タグ:読書
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:

スタンダール 赤と黒(下) マチルド② 2007光文新訳古典文庫 [日記(2019)]

赤と黒(下) (光文社古典新訳文庫)  続きです。20歳の若者との恋に酔うルナール夫人と比べると、マチルドは奇矯の一言に尽きます。愛していると言った翌日には無視し、つれなくした翌日にはまたジュリアンを誘い翻弄します。マチルドはジュリアンを愛しているわけですが、それを邪魔するのが彼女の自尊心で、ふたりは絶交と仲直りを繰り返します。マチルドの気まぐれに付き合うのはジュリアンならずとも読む方も疲れます。
 ジュリアンもまたマチルドに恋していたのかどうか?。貴族の娘と結婚して上流階級で成り上がろうと思ったわけではなく、マチルドに仕掛けられたから受けて立とう、彼女をモノにして支配階級に一泡吹かせてやろうという身分コンプレックスが動機です。

 ジュリアンは、ロシア貴族から「恋愛必勝法」の手ほどきを受け、53通のラブレター・サンプルを貰い受けます、これは結構笑う話です。「当て馬」を使いマチルドを嫉妬させようという作戦。ジュリアンはラ・モール伯爵邸のサロンに集う夫人の中で、結婚1年で夫を亡くした元帥夫人を当て馬に選びます。53通のラブレターを送り、マチルドの眼を見ずマチルドに聞こえるように元帥夫人をかき口説きます。努力のかいあって、マチルドはジュリアンに屈服。ここでマチルドを許せば驕慢がまた頭を持ち上げる、そう考えるジュリアンは容易にシッポを振らず、マチルドに保証を要求します。一緒にロンドンで暮らそうと彼の気を引きますがジュリアンは応じません。

 そんな折、究極の「保証」が出来します、なんとマチルドが妊娠します。

これこそ保証じゃないかしら? 私は永遠にあなたの妻です。
そう聞かされてジュリアンは愕然となった。

 やはりジュリアンは愕然とするわけですね。妊娠がマチルドを変えます。父親ラ・モール侯爵に打ち明けて結婚を認めさせようとします。侯爵は怒り心頭。ジュリアンを秘書として重用し、貴族のサロンに出入りできるまで引き上げてやったわけですから、これは裏切り、恩を仇で返す行いだというわけです。いずれはマチルドを貴族の若者と結婚させ公爵夫人にすることを夢見ていたのに、あろうことか、平民のそれも使用人ふぜいと...この人でなしめ!。
 妊娠したマチルドは変わります。

あの人が死ねば私も死にます!・・・

 ジュリアンは暗殺されるかも知れない。もしジュリアンが死ねば、ソレル夫人として喪服を着てパリ中にふたりの関係をバラしてやる!と父親を脅します。ラ・モール侯爵は渋々折れて婚姻を認め、ジュリアンに従男爵・軽騎兵中尉の地位を用意します。
 ジュリアンの身元紹介の調査が行われ、ルナール夫人から手紙が届きます。手紙には、ジュリアンは家庭に入り込み、女性を誘惑して一家の財産を乗っ取る非道の男であるあることが記されています。教会の告解師によってルナール夫人が書かされたもので本心ではありません。ジュリアンがルナール夫人を誘惑したことは事実ですが、上流階級で町長のルナール氏の鼻をあかすためであり金銭目的ではありません。動機はどうあれ、ジュリアンはルナール夫人との恋に酔い、マチルドとの恋の駆け引きの最中でも常にマチルドとルナール夫人を比べ、思い出に浸っていました。
 この手紙を読んでジュリアンは直ちにヴェリエールに戻り、拳銃でルナール夫人を撃ちます。

 ジュリアンは何故ラモール夫人を殺そうとしたのか?。スタンダールは侮辱されたから書いていますが、読者としてはイマイチ納得できません。マチルドの妊娠で愛の「保証」を手に入れ、ラ・モール侯爵から大金と準男爵の地位を手に入れ、念願の貴族への階段を駆け上ったわけです。殺人をおかせば野望は一瞬にして潰えます。それを犠牲にしてまでルナール夫人を殺す必要があったのか?。ジュリアンは逃げようともせずむざむざと捕まり、まるで死刑を望むかのように、我を忘れた激情からの殺人ではなく計画した殺人であると証言します。
 ジュリアンがラモール夫人を殺したかったのではなく、スタンダールがジュリアンを殺したかったのです。欲しかったのはジュリアンの首であり、描きたかったのはジュリアンではなくマチルドです。この事件でマチルドの自尊心に火がつきます。あらゆる伝手を頼ってジュリアンを死刑から救おうとしますが、

あの人が死んだら、私もあとを追おう・・・私ような身分の娘が、死刑を宣告された恋人をこれほど愛しているのを見たら、パリのサロンではなんというかしら? こんな愛情を見つけるには、英雄たちの時代までさかのぼらなければならない。シャルル九世やアンリ三世の時代、人々の胸をときめかせたのは、こんな種類の恋だったはずよ

さすが、処刑された愛人の生首にキスした王妃マルグリットの名を受け継ぐマチルドです。ジュリアンは処刑され、マチルドはギロチンで切り落とされた首にキスします、La fin。

 スタンダールは何を描いたのか?。『赤と黒』は1830年の七月革命を予告した小説だそうです。美貌と頭脳で階級の壁を崩そうとする若者が主人公ですが、一方で光るのはマチルド。七月革命で消え去るジュリアンが倒そうとした貴族階級の娘ですが、七月革命を予告したのは実はマチルドかもしれません。
自由の女神.jpg ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』 


赤と黒(上) 、(下)  

タグ:読書
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:

嫌韓は高齢者に多いのか? [日記(2019)]

 先日「申維翰と元駐日韓国大使」をblogにupしましたが、これも「嫌韓」の一種なんではなかろうかと思っています。「なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか(2019.05.18)」(澤田克己・外信部長)という毎日新聞のコラムが言う「高齢者」ですから。blogでは「宗教」と「政治」は書かないようにしているのですが、最近の日韓関係は面白いのでつい...「もの言はぬは腹ふくるるわざなれば」です。

 筆者・澤田克己は、世論調査の「韓国に親しみを感じる」の回答が18~29歳では57.4%、70歳以上では28.1%という結果から嫌韓に「世代」を持ち込み、「高年齢層の方が韓国に対して厳しいというのは一目瞭然でしょう」と結論づけます。その根拠を「経済的にも、政治的にも、日本とは比べものにならない小さく、弱い存在でした。それなのに、バブル崩壊後に日本がもたついている間に追いついてきて生意気なことを言うようになった。そうした意識が嫌韓につながっているのではないか」とし、高齢者が嫌韓に走る理由を、「定年退職した後に感じる社会からの疎外感というものも無視できないのかもしれません」とします。
 さらに、朝鮮学校への補助金支出問題の弁護士に懲戒請求を出した人物の、「(定年後)社会に参加していない、疎外されているようなところがあった。自分は社会とつながっているんだという自己承認を新たにしたというような意識が働いて、一線を越えてしまったのではないか」という発言(反省?)を引用して「高齢者=嫌韓」論を補強します。高齢者が嫌韓でもいいのですが、その根拠を「定年後の疎外感」とすることは如何なものか。当然コラム炎上したようです。
 昨今の「日韓問題」ほど面白い政治ショーはありません。高齢者は時間があるので(要はヒマなので)新聞、雑誌、ネットなどでマメに情報収集し、ヒマな高齢者が煽られて嫌韓となる、とでも結論付ければ、炎上も無かったでしょう。
 ひょっとして、徴用工訴訟、自衛隊機レーダー照射問題、韓国国会議長の天皇を持ちだした発言などに憤る毎日新聞の記者が、高齢者をダシに自分の嫌韓を「吐露」したコラムなんじゃないか?(笑。もう少し取材を続けてみたい、と澤田克己・外信部長は書いていますから、嫌韓=高齢者を証明してほしいものです。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

緊急速報メール [日記(2019)]

Screenshot_20190905_110507_com.android.cellbroadcastreceiver.jpg 緊急通報.jpg
 5日の11時過ぎスマホが派手に鳴り、何だろうと思ったら「緊急速報メール」。何しろ東南海地震があってもおかしくない地域に住んでいるので、ギョ!。幸い訓練でした。何しろ東南海地震があってもおかしくない地域に住んでいるので、ギョ!。幸い訓練で、検索すると大坂880万人訓練のエリアメールだそうです。驚きましたが、Huawei+格安simでも緊急メールが受けられることが分かっただけでも大収穫。
 我が家は高台にあり、津波の危険はありませんが、日頃の心構えが出来ていないので、緊急メールが届いてもきと右往左往するだけでしょう。これを機会に地震対策やらないと...。

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

映画 レッド・リーコン 1942 ナチス侵攻阻止作戦 (2015露) [日記(2019)]

レッド・リーコン1942 ナチス侵攻阻止作戦 [DVD]  amazonのPrimVideoで観たロシア映画、邦題通り「大祖国戦争」でナチスと戦うソ連軍の話です。
 ヴァスコフ曹長が率いる高射砲2門の小さい兵営の話です。敵も現れないので、兵士は村の娘と懇ろになり酒を飲んで喧嘩ばかり。業を煮やしたヴァスコフは、酒を飲まない兵士を送れと司令部に要求し、やってきたのは何と女性兵士の一団。女性兵士といえどソ連の兵士は勇敢。ドイツの爆撃機が飛来するや、高射砲で撃ち落とします。指揮を取るのがオシャニーナ伍長。

 前半、女性兵士たちの来歴が語られます。リザヴェータ・ブルチキナは富農(クラーク)の娘で、ロシア革命で一家はシベリアに追放され軍に投じます。オシャニーナの夫はドイツ軍の侵攻で夫は戦死、1歳半の息子を母親に預け赤軍伍長となります。コメルコワは将軍の娘で、既婚者の中佐と道ならぬ恋の末兵士となり、ジェーニャは家族をナチスに虐殺され、ユダヤ人のグルヴィイッチは一家は強制収容所に送られ恋人を「大祖国戦争」で失い、チェトヴェルタクは孤児。いずれも歴史に翻弄された女性たちが兵士となって祖国のために戦うという設定。女性が社会進出する共産国ならではの戦争ものです。
 彼女たちを率いるヴァスコフは職業軍人。看護師と結婚し息子を得ますが、負傷し病院に入っている間に妻は駆け落ちして離婚、母親に預けた一人息子は病で亡くなるという過去を抱えています。

 オシャニーナが森で2人のドイツ軍斥候を発見し、後方撹乱を目的とするゲリラと考えたヴァスコフは、彼女たち5人を率いてドイツ兵を追います。『レッド・リーコン』は、曹長に率いられた女性兵士たちの物語です。
 ドイツ兵は2人ではなく機関銃で武装した16人。16人にヴァスコフに率いられた5人の女性兵士が戦いを挑みます。人数と武器で劣勢のヴァスコフ隊は、ドイツ兵を倒し機関銃を奪って戦います。武器不足ため弾だけ渡され、死んだ味方の兵士の銃で戦う『スターリングラード』を思い起こします。女性兵士はけなげに戦いますが、ひとりまたひとりと倒され、彼女達の死に、前半で描かれた過去がダブり戦争の悲劇を盛り上げます。死者1500万人ともいわれる独ソ戦のほんの小さな戦いですが、どの戦場でも兵士ひとりひとりが背負ったものの重さは変わらない。戦争映画の佳作、おすすめです。
The Dawns Here Are Quiet(1972)』のリメイクだそうです。

監督:レナト・ダヴレトヤロフ
出演: ピョートル・フョードロフ, アナスタシア・ミクルチナ

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:映画
前の10件 | - 日記(2019) ブログトップ