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ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q―檻の中の女―(2011ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [日記(2019)]

特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕  映画が面白かったので原作を読んでみました。ネタばれのミステリを読んでもつまらないわけですが、「与圧室」という普通ではない装置がなぜ民家の納屋にあったのか?、20年前の交通事故が誘拐、殺人の動機となりうるのか?映画の疑問が気になったので原作にあたったわけです。主人公カール、助手のアラブ人アサドの魅力も手伝ってのことです。

カール・マーク
 警部補、コペンハーゲン警察の「特捜部Q」の責任者。殺人捜査課時代、部下一人が死に一人が全身マヒ、自身も重傷を負い2か月後に復帰すると席は無く、過去の迷宮入り事件を再捜査する新設の「特捜部Q」に追いやられます。事務所は警察署の地下、責任者とはいうものの部員は助手のカール一人。殺人課の課長は、ハミ出し刑事カールを追い出し、「特捜部Q」に付いた予算を殺人課に流用しようという一石二鳥を狙ったわけです。
 カールには妻と妻の連れ子の息子がいるのですが、妻は男を作って家出、中学生?の義理の息子とレンタルビデオ店でアルバイトをする下宿人の三人暮らし。義理の息子はカールから金をせびり、学校をサボって遊び暮らし。下宿人は料理が得意で、カール家の主夫?。

ハーフェズ・エル・アサド
 警察の仕事がしたくて日参するうちにガールの助手となったムスリムのシリア移民。従って警察官ではない。濃いアラビアコーヒーと地下事務所でアラブ料理を調理し、ダマスカスで培った恐ろしいスピードで車を運転するなどで、カールの顰蹙を買います。本人によると、車はおろかバイクから戦車まで運転でき、シリアに帰れば殺されるという謎の存在。捜査資料を読み込み、カールが必要とする情報はすべてアサドが提供するという仕事ぶりで、刑事顔負けの働きをします。迷宮入事件の中から「ミレーデ失踪事件」を取り上げたのもアサド。
 政治亡命者?が普通に暮らし警察で働くという、日本人にとっては理解不能の設定ですが、これが面白いです。

 カールとアサドが失踪した女性国会議員ミレーデの行方を追う2007年と、ミレーデが誘拐され監禁された2002~2007年の二重構造でストーリーは進行します。『檻の中の女』の特徴は、カールとアサドのコンビの妙もさることながら、誘拐の動機と「檻」の特殊性でしょう、以下ネタバレです。

動 機
 20年前ミレーデが14歳の頃、父親の運転する車が無謀な追い越し運転で事故を起こし、ミレーデは無事だったものの両親は死亡、弟は脳に損傷を受け精神障害に陥ります。追い越された車も大破、運転していた男と少女が死亡、妊娠していた男の妻は事故現場で双子を出産し、双子のひとりは死亡、以後車イスの生活となり、少年ひとりが無傷で生き残ります。この事故で少年と少女の運命が大きく開きます。
 ミレーデは障害のある弟を抱えながら国会議員となり、美貌と弁舌によってマスコミの寵児となり野党第一党の副代表にまで上り詰める一方、少年は車椅子の母親と幼い弟とともに辛酸をなめ成長します。

 ミレーデの車が無理な追い越しをしなかったら…と少年の(20年経って30代半ばの大人ですが)恨みはミレーデへと向かい、自分が受けた苦痛をミレーデにも与えるため誘拐し檻に監禁します。これが動機。ミレーデの檻の中の悲惨な境遇は執拗に描かれますが、少年が受けた苦痛は描かれません。動機にリアリティが乏しい(特に映画では)のはこのためです。


 もうひとつの謎「檻」です。これがなんと潜水病の治療などに使われる「与圧室」。誘拐されたミレーデは与圧室に閉じ込められ、5年の歳月をかけて1気圧から5気圧までゆっくりと気圧を上げます。この5年は、少年が里親から虐待を受けた歳月。同じ苦しみをミレーデに与えた末、気圧を一気に下げ殺そうという計画です。5気圧に慣らされた肉体が一気に1気圧に晒されると、内部から爆発。この残忍さもさることながら、救出すればミレーデは死ぬわけですから単純に救出できません。減圧プログラムが走り、刻一刻とミレーデの死が近づきサァどうする?と云うなかなかよく考えられた設定で、映画よりサスペンス度は勝っています。
 この与圧装置がなぜ民家の納屋にあったのかというと、技術者である少年の父親が研究のため所有していたいうのです。映画ではこの辺りを端折っているので、何で与圧室?となるわけです。この殺害方法はかつてなかった斬新?なアイデアです。

 デンマークの人名は慣れないうえ、次々に新たな人物が登場するので混乱しますが、面白いです。シーリーズ化されていますから、当分楽しめます。

 『キジ殺し』『Pからのメッセージ

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絵日記 サクランボ [日記(2019)]

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 3月                 5月
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 種が欲しかったので近所からいただいてきました。食べてみるとけっこう甘い。

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磯田道史 素顔の西郷隆盛(2018新潮選書) [日記(2019)]

素顔の西郷隆盛 (新潮新書)  『武士の家計簿』、NHKの歴史番組『英雄たちの選択』の磯田道史氏です。番組で取り上げる人物、事件の多彩さ、磯田センセイの斜めから読む解説が面白く、この番組は結構好きです。その磯田センセイがどんな西郷隆盛像を描いてくれるのか?。

 語り口も平明、時に軽妙、引用も原文ではなく現代語訳され、西郷の側近くにいた人の証言から人物に迫っていますから、読み易いです。

栄達して多くの美妾を集めているという噂の新政府高官に西郷がこう言いました。「ずいぶん、美形を集めとるそうですなぁ」「西郷さんも美形はどうですか」「うちにも美形はおります、おーい」と西郷がポンポン手を叩くと、ワン! と吠えながら雌犬がやってきたそうです、 などなど。

 「西郷さん」と庶民から親しまれているにもかかわらず、大久保利通、木戸孝允などと比べるとイメージし辛い人物です。明治維新の最大の功労者にして西南戦争による大謀反人。大政奉還した幕府を戦争に引き出すために倒幕の密勅を捏造し、江戸で火付け強盗をさせ幕府を煽る謀略家の顔と、江戸城無血開城、朝敵庄内藩への温情など、様々な顔を持つ人物です。実のところ、”素顔の細郷さん”とはどんな人だったのか?。

 憑 依
 司馬遼太郎は、西郷を巨大な感情量の持ち主と表現して表現していましたが、著者は、

々西郷は、目の前にいるものなら、なんでもすべて、それに心が憑依してしまうようなところがあります。たとえば犬と一緒にいて、犬がウナギを食べたいそぶり見せると、自分も大好物なのにあげてしまう。・・・自他の区別がない、他人と境目がないばかりか、犬と自分の区別さえもないところがありました。だから、一緒にいるとやがて餅みたいに共感で膨れ上がり、一体化してしまう。自分と他者を峻別するのが西洋人とするなら、それとは違う日本的な心性を突き詰めたのが西郷であり、だからこそ時代を越えた人気があるのだと思います。

感情量のスケールが並外れているわけです。当たり前ですが誰にでも憑依するわけではなく、自分と位相が同じ人物に、並外れた感情で同化してしまわけです。これが西郷という人物の基本トーン。

 島流し
 西郷は、二度の遠島にあっています。この遠島が西郷の節目だと著者は云います。1度目は、将軍職の慶喜擁立運動が祟って幕府から追われ、斉彬の死もあったのでしょうが、月照と入水自殺を図り生き残ります。何も男同士心中することはないでしょうが、これも西郷の「憑依」が引き起こした事件です。藩は西郷を死んだものとして奄美大島に逃がし、3年間大島で過ごします。西郷は、藩に隷属させられ奴隷に等しい環境の島の人々を目の当たりにしたはず。この体験が、西郷の革命思想の原点になったのではないかと著者は考えます。

 久光によって呼び戻された西郷は、「地ゴロ」発言と独断専行が祟って、今度は徳之島・沖永良部島に流されます。文久元年(1861年)11月に帰ってきたと思ったら、翌年の6月にはまたも島流しという忙しさ。この間「寺田屋騒動」があり、久光としては藩内の過激派を一掃したかったのでしょう。

私(著者)は、西郷はここでもう一度変わったと思うのです。・・・浪人が集まって尊王だ攘夷だとわいわい騒ぎ、それで国が変わるかというと、そうではない。藩ぐるみの軍事力を動員し、その力でもって日本は変えるものであり、官僚機構と軍隊組織という固い基盤をもって自分の政治意志行うべきである・・・

そのためには君主さえも騙していいし、久光を騙すと同時に、天皇の命令でさえ非義の勅命、つまり正しくない勅命は勅命ではない。もっと言うなら、正しくないこと言う天皇は天皇ではない、とまで言いかねない思想へと近づいていったように感じます。

リアリスト西郷の誕生です。並外れた感情量を持ち、平等・博愛の革命思想を持ったリアリスト、それが西郷さんというわけです。とまぁ一般啓蒙書ですから、磯田センセイも気楽に書いています。

 個人的に気になったのは「留守政府」と「征韓論」。
 廃藩置県で一区切りついた岩倉、木戸、伊藤、大久保等は、自分たちが帰るまで新しい事は一切するなと言いおいて外遊します。留守を預かった西郷は、 府県の統廃合(3府72県)、学制の制定、身分制度撤廃、 陸軍省・海軍省の設置、国立銀行条例、徴兵令、地租改正条例の布告など次々に重要な改革を推し進めます。「留守政府」という呼称は、後に政争に勝ち残った外遊組を視点であり、明治5~6年の時点で、西郷たちが本来の政府で岩倉たち外遊組は政府派遣の視察団だというのです。
 「韓論」、「韓論」です。この「韓論」に敗れて西郷は下野し、板垣、江藤、副島等が新政府を去ります。この明治6年の政変、「韓論 論争」は、二年近くも国を留守にしていた岩倉、大久保、木戸、伊藤たちによる主導権回復運動だったのではないか?(毛利敏彦 著『明治六年政変』)。いずれも「なるほど」です。

 今更と言われそうですが、目からウロコの一冊でした。

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奥泉 光 雪の階(2018 中央公論新社) [日記(2019)]

雪の階 (単行本) 奥泉 光は『「吾輩は猫である」 殺人事件』以来です。
 天皇機関説事件、永田鉄山暗殺、226事件の起こった昭和10~11年、ファシズムの色濃い時代を背景に、二十歳の伯爵令嬢・笹宮惟佐子と女性カメラマン・千代子が心中事件の謎を追うミステリです。文体は絢爛にして流麗かつ晦渋、装飾過重とも云えますが、これは「昭和浪漫」を色濃く描く装飾でしょうか。

 惟佐子は友人、帝大教授の娘・寿子が革新派青年将校と青木ヶ原の樹海で情死する事件が起きます。寿子は青酸カリ、将校は拳銃で心臓を撃って命を絶ち、寿子が妊娠していたことで行き場を失った男女の心中事件として片付けられます。惟佐子は友人の死に疑問を抱き、千代子の助力を得て真相を調べ始めます。
 本書の魅力のひとつが、この惟佐子の造形です。伯爵で貴族院議員の娘、女子学習院に通う二十歳の令嬢。「錦絵から抜け出したような装い・・・決して現代的な美人顔ではないのに、眼を惹き付けてやまぬ艶味のある佇まい」と描かれる美人。エラリー・クィーン、ヴァン・ダインの探偵小説を原書で読み、囲碁と数学の懸賞問題を解くのが趣味という、深窓の令嬢らしからぬ女性です。
 もうひとりのヒロイン千代子は、惟佐子の幼馴染みの女性カメラマン。昭和10年に女性ながらカメラ片手に現場を駆け巡る時代の先端をゆく女性です。惟佐子の意を受けて新聞記者の蔵原とともに生前の寿子の足取りをたどり、情死の真相を追います。

 『雪の階』が普通のミステリと異なるのは、事件を昭和の政治状況と結びつけ、さらに(好き嫌いが分かれると思いますが)伝奇的要素を盛り込んだところでしょうか。
 ドイツから有名なピアニストが来日し、ピアニストと深交のある惟佐子の叔父・白雉博充が登場し(名前だけですが)、白雉が関係する心霊音楽協会、神智学の話となり、白雉の著書『偉大なる文明の復活と超人類の世紀』の解説が出るに及んで、ほとんど半村良の「伝説シリーズ」の趣となります。

 この『超人類の世紀』とは、ナチスの「アーリア人種優越論」のアジア版。アーリア=ゲルマン人種と日本人種は、超古代に起源を持つ「神人」の子孫であるとし、この神人が猿人や獣人と混交し純潔な神人の血統はドイツと日本にわずかながら残されており、その血統を保護・醇化するのが急務であると説く。

 さらに、朝鮮半島から渡来した天皇家の祖先はユダヤ人であり、天皇家には獣人の血が混入している。これを日本人が皇孫として崇めるの誤りであり、日本人種の「神人性」の醇化という観点からから害悪であるとし、現陛下が英米流の自由主義に固執するのは、血中に濃く流れるユダヤ性であると批判。汚染された血を清くすることは難しく、これを廃すべきである。
 そして、神人の血統を正しく伝える「純潔天皇」、高天ヶ原に最初に現れたアメノミナカヌシノカミの直系である「純潔天皇」を発見しなければならない。ナチスのアーリア=ゲルマン人種純化運動同様、「純潔天皇」の出現こそが日本人種の「神人」醇化事業の発端となり、新・神聖代とも呼ぶべき日本帝国の新たな栄光の時代の始まりとなる...、というトンデモ本です。

 天皇の下に万民が平等な新体制を打ち立てる「昭和維新」が、「純潔天皇」を戴く「神人醇化運動」に擦り代わり、「アメノミナカヌシノカミ」を教義の中心に据える新興宗教の存在が明かされ、惟佐子も千代子も、寿子と革新派青年将校の情死事件ももろ共に「226事件」へと雪崩れ込みます。226事件の影にあったかもしれない、もうひとつ226事件の物語りです。

 500ページを越える長編ですが、犯人探しに釣られて一気に読めますが、オカルト本やアメノミナカヌシノカミの出現で、ミステリが伝奇小説に変わり、昭和史の裏面を期待したむきには肩透かしをくらうことになります。荒唐無稽とも云えるストーリーですが、「島津ハル事件」なる元ネタがあるようです。

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絵日記 花 + 虫 [日記(2019)]

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 XperiaZ

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映画 ザ・ウォーク(2015米) [日記(2019)]

ザ・ウォーク [AmazonDVDコレクション]

 1974年、ワールド・トレード・センターのツンタワー(地上高411m)にロープを張り”綱渡り”をしたフランスの大道芸人フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)の物語です。
 フィリップは子供の頃見たサーカスの綱渡りに魅せられ、パパ・ルディ(ベン・キングズリー)に弟子入りし大道芸人となります。フィリップのステージはパリの街頭。街灯にロープを張り綱渡りを見せる大道芸人。やがてフィリップのファンが増え、彼らの援助のもと街灯からノートルダム大聖堂へ、ワールド・トレード・センターへと高度と危険を増し過激になってゆきます。お客は拍手喝采ですが、れっきとした違法行為でお巡りさんは天敵。フィリップは、通行人を喜ばせる違法行為を「クーデター」と呼んで、むしろ誇りしています。違法行為がなぜ誇りななのか?。フィリップからワールド・トレード・センターの綱渡りを聞いた人物は、

 違法だ、破壊思想、背徳的かつ反社会的でアナーキー、怒れる不満分子しか関わらない

とこの違法行為を全面的に支援します。映画の魅力を端的に表現した言葉でしょう。
 
 ワールド・トレード・センターの綱渡りは、ビルが完成する前、建築中のドサクサに紛れて行われます。パパ・ルディは命綱を付けることを主張し、フィリップは断固これを拒否します。安全が保証された綱渡りはクーデターではないというわけです。

 ストーリーはワールド・トレード・センターの綱渡りに至る話だけで一見単調ですが、地上400m死と隣り合わせた綱渡りのシーンは、(成功すると分かっていても)ヘタなサスペンスよりスリルがあります。おすすめ!、ただし高所恐怖症の方は見ない方がいいでしょう(笑。
 監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ/一期一会』のロバート・ゼメキスですから手堅く、主演は『(500)日のサマー』のジョセフ・ゴードン=レヴィット、何時もながら力まない演技が効果的です。

監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット


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令和元年5月1日 [日記(2019)]

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 昭和、平成、令和と生きてしまいました。

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映画 DESTINY 鎌倉ものがたり(2017日) [日記(2019)]

鎌倉ものがたり : 1 (アクションコミックス) DESTINY 鎌倉ものがたり [DVD] (通常版)  原作が西岸良平の漫画ですから、『ALWAYS三丁目の夕日』のような映画です。『夕日』は昭和33年の東京を舞台としたノスタルジックな人情ドラマですが、こちらはこれも昭和の鎌倉を舞台に古都の妖怪、魑魅魍魎が人間に悪戯をするホラーと云うかコメディです。
 人間と魔物が共存できる街というと、関西では京都ですが、関東では鎌倉になるんでしょうか?。鎌倉には、

 ・魔物が開くマーケット「夜市」があり、掘り出し物が安い
 ・人間とともに魔物が客としてやって来る飲み屋がある
 ・深夜丑の刻に「江の電」の駅から「黄泉の国」行きの電車が発車する
 ・鎌倉署には「心霊捜査課」がある

などなど怪奇が日常と同居しています。この「魔都」鎌倉に住む小説家の一色正和(堺雅人)を中心に、歳の離れた妻・亜紀子(高畑充希)、一色担当の編集者・本田(堤真一)、死神→安藤サクラが演じますから出色、貧乏神(田中泯)などがドタバタを繰り広げ、果ては「黄泉の国」で天頭鬼なる魔物とアクションを繰り広げます。
 人が死ぬと、地区担当の死神が現れその人を黄泉の国に連れて行くわけですが、よんどころない事情があれば「幽霊申請」という制度があり、生命エネルギーを貰って幽霊となりこの世で生きることができます。ところが申請が多すぎて死神局は生命エネルギーの「財政破綻」を起こし、幽霊申請を一時ストップ。年金問題を連想させる笑い話です。幼い子供を残して死んだ本田は幽霊申請が通らず、死神の勧めで魔物となって現世に留まる「魔界転生コース」を選択します。つまり、元の姿の幽霊とはなれず魔物となってこの世に留まれるわけです。と云ったクスグリが随所にあって、ニヤリとさせられます。

 一色の妻・亜希子が魔物によって生霊に変えられ黄泉の国に連れ去られます。これが亜希子に横恋慕した天頭鬼の仕組んだ策略。生霊ですから死んだわけではなく、一色は黄泉の国に行き天頭鬼と大乱闘の末亜希子をこの世に連れ戻すという「噺」です。たわいないと云えばたわいないですが、VFXが効いていてなかなか面白いです。久々に西岸良平を読んでみようか…。
黄泉の国
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監督:山崎貴
原作:西岸良平
出演:堺雅人 高畑充希 堤真一 安藤サクラ

 平成最後の記事です。

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モルガン・スポルテス ゾルゲ 破滅のフーガ(2) [日記(2019)]

ゾルゲ 破滅のフーガ 続きです。
 ゾルゲの活動は、逮捕後の『調書』と『獄中記』でほぼ明らかで、事件の登場人物も尾崎秀実、宮城与徳、クラウゼン、ヴーケリッチ等々お馴染みの面々です。本書は「ゾルゲ事件」のドキュメントではなく小説ですから、一連の事実のなかに何を見つけるかがテーマとなります。作者がゾルゲのなかに発見したものは「破滅のフーガ」。フーガは「遁走曲」ですから、破滅へ向かって遁走するゾルゲを描いたことになります。ゾルゲは何から逃げていたのか?。遁走の果てが何故「破滅」だったのか?。

 ゾルゲは第一次世界対戦に志願し、西部戦線で2度にわたって負傷していますから、勇敢で愛国的な青年だったはずです。その青年が、入院中に看護師の感化で共産主義の洗礼を受けドイツ共産党に入り、コミンテルンを経て赤軍参謀本部第4局(諜報)のスパイとなります。第一次世界大戦の激戦地、西部戦線で戦ったゾルゲは、戦争の悲惨さを身をもって知ったはずです。ロシア革命、ドイツ革命の時代ですから、多感な青年がコミュニストになっても不思議ではありません。
 ゾルゲは、コミンテルンで情報収集と分析の能力を認められ、赤軍の諜報員として上海、さらに東京でスパイ活動に従事します。本書で描かれるには、バルバロッサ作戦、日本の南進作戦をすっぱ抜く諜報活動よりも、諜報活動のためにナチスに入党し、ドイツ大使や武官を手玉にとる裏切、それによって精神のバランスを失ってゆくスパイの姿であり、高邁な理想を掲げる共産主義に裏切られたひとりの理想主義者の姿です。

 本書は、理想に裏切られたゾルゲがオートバイでアメリカ大使館の壁に激突する「自殺」(1938)から幕が開きます。

 ゾルゲが希望を託したソ連は、共産主義の理想とは裏腹に党中央では苛烈な権力闘争があり、キーロフ暗殺(1934)に始まる大粛清(1936)、トゥハチェフスキー、ブハーリンが粛清され、粛清はコミンテルンの外国人共産主義者へも及びます。ゾルゲにも召還命令が出ますが帰れば粛清が待っているという状況下で、世界革命を目指したコミュニストは、政治の世界に絶望していたと想像されます。
 ファシズム(ヒトラー)も共産主義(スターリン)も、一党独裁で人間性を抹殺することにおいては同質というわけです。リュシコフの様に亡命(1938)しなかったのか?。ゾルゲはファシズム、共産主義同様資本主義も信用していなかったのでしょう。ソ連の体制に愛想をつかしながら、なぜソ連のために独ソ戦の勝利に貢献する諜報活動をしたのか?。ロシアはゾルゲの母親の故国であり、妻カーチャがモスクワにいたことも要因でしょうが、自ら述べているように諜報という仕事がゾルゲの体質に合っていたこと、あるいはゾルゲは何処かで人類が平等で平和に暮らせる世界を信じていたのかも知れません。当面の敵であるヒトラーを倒すためにスターリンに味方した、というこでしょう。

 ただし、ゾルゲこの思いとソ連の判断は別です。バルバロッサ作戦(1941)を知らせた電文の返答はつれないもの、”貴殿の情報に関して、我々はその信憑性を疑っている”。タス通信は、独ソ不可侵条約のもとでドイツの侵攻はあり得ずドイツ軍の東方移動は演習であると、公式にバルバロッサ作戦を否定します。ソ連大使館の連絡員の反応はさらに冷ややか

ラムゼイ同志(ゾルゲの暗号名)、ソヴィエト参謀本部内に警告が流れた、このような雑音、このような愚かな情報に耳を貸す者は、銃殺刑に処されることになる。西でウィンストン・チャーチル相手に失敗しているというのに、東方で第二の戦線を開くほどヒトラーが狂っていると、スターリンに思わせたのかかね!・・・ここ東京で、色々とあなたについてのことを聞いている、ラムゼイ同志、放埒なあなたの生活についてだ。バーや淫売窟に行く回数をもう少し減らしたらどうかな? この意見は、わたしが言っているのではない。上から、モスクワの、最上層部のその上からだ。

 これがソ連参謀本部のゾルゲ評価です。アイノ・クーシネンによると、バルバロッサ作戦の情報に接したスターリンは、ゾルゲを「日本のちっぽけな工場や女郎屋で情報を仕入れているくそたれ野郎」と、こき下ろしたということです。
 ドイツ侵攻は、ゾルゲ以外、ソ連の諜報機関も警告していますが、スターリンはこれを西側の謀略だと考えて動かなったわけです。これに懲りたのかどうかスターリンは、尾崎秀実が掴んだ1941年9月の「帝国国策遂行要領」情報を信用し、独ソ戦で勝利します。
 ソ連がゾルゲを評価し「ソ連邦英雄」としてその功績を讃え1964年のことです。

タグ:読書 ゾルゲ
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映画 特捜部Q 檻の中の女/キジ殺し(2013、2014デンマーク) [日記(2019)]

特捜部Q ~檻の中の女~ [DVD] 特捜部Q ~キジ殺し~ [DVD] 特捜部Q ―檻の中の女― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕  TVドラマのような『特捜部Q』という安っぽいタイトルですが、なかなか見ごたえのある刑事モノです。
 殺人課のカール(ニコライ・リー・コス)が銃で撃たれて負傷し3ヶ月後に復帰すると、殺人課に席はなく新設の「特捜部Q」に異動を命じられます。《Q》は、迷宮入りになった事件の捜査資料を整理する部局。無能か第一線を退いた警察官のやる仕事で、(移民と思われる)アラブ系のアサド(ファレス・ファレス)と共に書類整理をやるはめになります。カールとアサドが迷宮入り事件を再捜査し解決するプロットですが、見どころは、犯人探しのプロットよりも、豪腕一直線のカールと一歩退いた冷静さで事件を見つめるアサドの名コンビ振りです。片の付いた事件を蒸し返すわけですから誰も快く思わず、警察内部は非協力的で妨害さえ入る始末。この抵抗勢力をカールの豪腕が跳ね除け、アサドがソフトランディングさせるわけです。

 カールは妻に逃げられ、大きな息子と二人暮らし、母親はどうしていると息子に聞くと「新しい男とヤリまくっている」という返事。アサドは2年間倉庫でスタンプ押しが仕事だったという以外に私生活は謎。現世の幸福とは程遠いふたりが主人公ですから、映画は明るい筈がありません。迷宮入り事件ですから、事件が起きた過去とふたりが捜査する現在が交差する二重構造となり、過去も現在も”真っ暗”。

檻の中の女
 フェリー船上で行方不明となり、投身自殺と見なされた「国会議員ミレーデ失踪事件」です。フェリーに解離性障害の弟を残して投身自殺するはずないと考えたカールは、ミレーデは誘拐されたか殺されたと考え、彼女の周辺を洗います。タイトルが『檻の中の女』ですから、誘拐。誰が何のためにミレーデを誘拐し、何処に監禁しているのか?、ということになりますが、ミレーデが監禁された「檻」はなんと「加圧(与圧)室」。気圧を上げたり下げたりして、潜水病の治療に使うアレです。こんなものがなぜ農家の納屋にあるんだというツッコミは別にして、こんな装置に女性を何年も閉じ込める犯人の狂気と、減圧でミレーデの命が刻一刻と危機に近づくサスペンスはなかなか。「何故」という犯人の背景と誘拐の動機はもうひとつ納得がいきませんが。

キジ殺し
 第2作では、カールとアサドに加え秘書ローセが加わります。《Q》に異動(島流し)させられますから、彼女も普通の警官ではなさそう(はみだし警官?)。目覚ましい活躍はしませんが、必要にして十分なサポートでふたりを支えます。
 《Q》の噂を聞き、カールのもとに再捜査の依頼者が訪れます。カールはすげなく断りますが、解雇された元警官の依頼者はその数時間後に自殺。迷宮入りを50件抱えているというアサドの反対を押し切り、カールは事件の再捜査を始めます。全寮制の有名校で双子の兄が殺され妹がレイプの末刺殺されるという事件で、犯人は心神耗弱で5年の刑期を3年で出所するという軽いもの。犯人を弁護したのが富裕層を顧客とする弁護士であり、顧客なかで事件の犯人は唯一の”庶民”。カールとアサドは、被害者の父親が調べた資料をもとに全寮制有名校で起きた20年前の殺人事件に挑みます。
 犯人は裕福な家庭に育った全寮制高校の生徒。その特権的な地位を利用し、欲望のおもむくままに犯罪を重ね隠蔽のために双子の兄妹を殺したわけです。20年前の殺人犯を割り出し20年後にホテルチェーンの経営者となった殺人犯を追い詰めます。過去と現在が交差する狭間に、ひとりの少女の存在が浮上します…。

 amazonのカスタマーレビューに釣られて観たのですが、思わぬ拾い物でした。原作がハヤカワ・ミステリ文庫でシリーズ化されているようで、読んでみたいです。

監督:ミケル・ノガール
出演:ニコライ・リー・コス  ファレス・ファレス

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